今宵は月の姿が見えない為か、星の数が多く、瞬いて綺麗に見える。
日中、冬晴れだったので、日が沈んでからは放射冷却で一層冷え込みが強くなっている。
こう寒いと走るのも億劫なるが、半ば習慣となっている手前、
靴の紐を締めないと、何だか寝つきが悪い。
深いため息と共に、裏の田圃へと吸い込まれる。
いざ走り出すと、いつもより体が重い。
気温が寒くて、中々体が温まらない事もあるが、最大の要因は昨日の深酒だと推察する。
マラソン練習を、雨天中止にした昨日、この機会とばかりに缶麦酒を積んでしまった。
それがボディーブローの如く効いていて、足腰が覚束ない。
そんな時に、前方の暗がりから、「サッ」と道を横切る白い影。
驚いて、心臓が一寸飛び上がってしまったが、よく見てみれば、
いつも出くわす猫ではないか。
「まったく、人間を馬鹿にして居やがる」
憤然として縺れる足を進める。
彼方の夜空には、無数の星が瞬いている。
星座の名称には疎いが、それでもオリオン座と冬の大三角形ぐらいは見当がつく。
冬の大三角形に向かって走って行くのだが、誰かが夜空を後に引いて行く様で、
一向に星たちに近づかない。
走っては引いて、引いては走って、どんどん逃げて行く。
そんな事を続けていると、左方向に煌めきを感じて振り向いた。
瞬きの間に煌めいて消えた、流れ星であった。
白い夜空の星たちに比べると、いささか暖色で、誰かが夜空の後ろから、
ナイフで斜めに切り裂いて光が漏れた様にも見える。
一瞬だったので、あるいは自らの疲労による幻覚ではなかろうかと思ったが、
やはり現実に流れた方に分があると感じる。
次回は瞬間を逃さぬ様、しっかりと見たい。
流れ星を掴まえる事は出来ないが、今度、あの白猫が現れたら、
ケツを蹴っ飛ばしてやろうと決めている。