688声 猫と流れ星

2009年11月18日

今宵は月の姿が見えない為か、星の数が多く、瞬いて綺麗に見える。
日中、冬晴れだったので、日が沈んでからは放射冷却で一層冷え込みが強くなっている。
こう寒いと走るのも億劫なるが、半ば習慣となっている手前、
靴の紐を締めないと、何だか寝つきが悪い。
深いため息と共に、裏の田圃へと吸い込まれる。
いざ走り出すと、いつもより体が重い。
気温が寒くて、中々体が温まらない事もあるが、最大の要因は昨日の深酒だと推察する。
マラソン練習を、雨天中止にした昨日、この機会とばかりに缶麦酒を積んでしまった。
それがボディーブローの如く効いていて、足腰が覚束ない。
そんな時に、前方の暗がりから、「サッ」と道を横切る白い影。
驚いて、心臓が一寸飛び上がってしまったが、よく見てみれば、
いつも出くわす猫ではないか。
「まったく、人間を馬鹿にして居やがる」
憤然として縺れる足を進める。
彼方の夜空には、無数の星が瞬いている。
星座の名称には疎いが、それでもオリオン座と冬の大三角形ぐらいは見当がつく。
冬の大三角形に向かって走って行くのだが、誰かが夜空を後に引いて行く様で、
一向に星たちに近づかない。
走っては引いて、引いては走って、どんどん逃げて行く。
そんな事を続けていると、左方向に煌めきを感じて振り向いた。
瞬きの間に煌めいて消えた、流れ星であった。
白い夜空の星たちに比べると、いささか暖色で、誰かが夜空の後ろから、
ナイフで斜めに切り裂いて光が漏れた様にも見える。
一瞬だったので、あるいは自らの疲労による幻覚ではなかろうかと思ったが、
やはり現実に流れた方に分があると感じる。
次回は瞬間を逃さぬ様、しっかりと見たい。
流れ星を掴まえる事は出来ないが、今度、あの白猫が現れたら、
ケツを蹴っ飛ばしてやろうと決めている。