696声 宝くじ浪人

2009年11月26日

「この売り場から出ました」
なんて惹句の看板が掲げられている、宝くじ売り場に、行列。
郊外の大型スーパーなどで、よく見られる光景である。
先日発売された、年末ジャンボ宝くじを買い求める為、
また今年も恒例の宝くじ売り場に、恒例の行列が出来ていた。
私の住んでいる街でも、数年前、特に目立たぬ郊外スーパーの売り場から、
一等と前後賞が出た。
途端に、街は噂で持ち切り。
近所のラーメン屋で、床屋で、飲み屋のカウンターで憶測の域を出ない話が延々と続く。
無論、当選者は誰か、と言うその一点が皆、気になる。
そして、憶測や推測は、飛び交っている間に、事実無根な結論に達してしまう。
「この間のアレ、あそこの団子屋だってね」
「いやいや、俺が聞いた話じゃね、団子屋じゃなくて、
ほら、あそこの団地の一家だって」
私の得た情報では、結局、事実は真実に結び付かなかった。
今日、その売り場の横を通ったら、もう一等が出たのが数年前だと言うのに、
売り場前は宝くじ浪人たちの行列。
当たった時の用心の前哨戦が始まっているのだろうか。
売り場に並んでいる人は皆、心なしか、他人の眼を避ける様に、
こそこそ買っては、いそいそと黄昏時の駐車場の喧騒に消えて行く。