714声 流れのままに

2009年12月14日

浅瀬で遊んでいたのだが、川の深みに足を取られ、急流に飲み込まれる。
流れのままに流されて、ふと目を覚ますと、目覚まし時計の電子音。
次の瞬間、切迫した喉の渇きと、痛烈な頭痛に襲われ、
寝床の中で腹の底から呻いている。
その時々の状況、体調にもよるが、川遊びの様に、酒席でも油断すると足を取られる。
そして今朝の様に、二日酔いを甘んじて受ける。
それは或る種、享楽の代償の様でもある。
朝起きて、午前中は使い物にならない。
体が、である。
水だけを飲んで大人しくしていると、午後には大分、楽になってくる。
体調と精神と言うのは、善と悪の様に表裏一体になっていて、
体調が回復に向かうと、応じて精神状態も健全になってくる。
先程まで、精神を蝕んでいた、悔恨や自己嫌悪の成分が、
いつもの楽観的で陽気な成分に中和されてゆく。
日が沈む頃になると、「ぐぅ」と、腹の調子も整い、
けろりとして、今日初めての食事を平らげている。
風呂に浸かりながら考えてみると、昨晩、どうやって風呂に入ったかが、
模糊としていて思い出せない。
思い出せないだけで、形跡から見るに、キチンと風呂には入っている。
アルコールの過剰摂取により、一時的に記憶装置の機能に障害が発生した。
と、飲み過ぎ男の自己検査結果が言う。
風呂から上がり、冷蔵庫から缶麦酒を手に取る。
しばらく缶を眺め、川の浅瀬と自らに言い聞かし、プルタブに爪を掛ける。