716声 犯人に告ぐ

2009年12月16日

「車上狙い」
と言うのか、こう言うのは。
車に戻って来たら、直感、車内が変化している機微に気付いた。
置いてある財布を見た瞬間、その変化を認識する事になった。
私の使っている財布は、二つ折りの財布なのだが、小銭入れの蓋が、
折り目からペロンと出ている。
人為的な仕業とは、明白。
手に取って調べて見ると、硬貨に札、金銭だけがそっくり抜き取られている。
いや、金銭だけでなく、札入れに入れてあった、
ビール券とハーゲンダッツの引換券もない。
カード類は手付かずだったので、一安心。
なんて暢気な事を言ってる場合では無く、車内を隅々まで検分してみたが、他は無傷。
随分と薄くなってしまった財布を手に、幾ら入っていたか記憶を探る。
おそらく、1万5、6千円だった。
私にとって、この金額は手痛い。
もっと昼飯に良い物を食べて、使ってしまえばよかったと、後の祭りを悔む。
その後、ATMへ行き、銀行カードを残高照会してみたが、これは大丈夫。
大丈夫なのだが、いい歳して少ない残高の預金残高を間の当たりにし、少々落ち込む。
近年は、スキミングだとか言う、カード情報だけを抜き取ってしまう、
邪悪な高等技術が横行しているので、未だ安心ならざる状況だ。
それにしても、鮮やかな手口である。
いや確かに、許されざる、憎むべき、外道な犯行なのだが、手口だけは綺麗だ。
カードの類には手を付けていないし、車内も荒らされた形跡が無い。
まるで、財布の現金だけ、マジックで消された様な感覚さえある。
犯人は土地勘のある、ベテランの盗人ではなかろうか。
私の財布には、このサイトの事が記してある名刺が入ってた。
札と一緒に盗んでいったかどうかは、幾つ入っていたかが判然としないので、
確認する術がないのだが、もしそうだったとした、犯人が見ているかも知れん。
犯人に告ぐ。
まさか、ビール飲みながらハーゲンダッツを食っているのではあるまいな。
財布から盗る時の、なみなみと酒が入ったお猪口を口へ運ぶ様な、
その繊細な機微の仕事は、才能である。
その才を、堅気な仕事へ活かした方が得策かと思う。
段抜かしで登る階段は、必ず躓く。
捕まる前に、今この瞬間から止めなさい。