719声 心持と鍋

2009年12月19日

昨日の夕方、前橋や高崎市内で風花を見た。
上空には、赤城山や榛名山を跨いで来た、厚い雪雲が垂れこめている。
暗く煙っていて、山並みが見通せない。
おそらく、吹雪いているのだろう。
いよいよ、雪の季節がやって来た。
この時期に恋しくなるのが、鍋料理。
すき焼き、ちゃんこ、水炊き、しゃぶしゃぶ、寄せ鍋。
鍋料理は多彩である。
その多彩な鍋料理に、近年、輪を掛ける様に新種が登場している。
カレー鍋、トマト鍋、豆乳鍋にコラーゲン鍋。
それらに共通するのは、「ヘルシー」と言う惹句。
鍋一つとっ捕まえて、健康に影響するかどうかを、吟味してもなぁ。
などと思っても、近年の外食産業における集客の比重が「女性層」に在るとの事なので、
その層が飛び付かなくては、商売にならない。
だから、一寸したチェーン店の居酒屋などに行くと、メニューにおける鍋の頁、
「ヘルシー鍋特集」などと銘打たれている。
そして、すき焼きや、水炊き、旬の鱈などが入っている海鮮鍋などは、
升席に追いやられているか、番付にも登場していない。
いささか残念に思いつつも、しぶしぶ、コラーゲン鍋だかなんだか、
得体の知れぬ鍋を注文する。
これがまた、美味かったりするので、文句の言いようもない。
判然としない気持ちで、美味い美味いと平らげた。
鍋を食って判然としない。
で思い出したのだが、内田百?の随筆に一つ話があった。
百?先生が友人を歓待する際に、悪戯心で一つの鍋を思いついた。
それは、鍋の中に、馬の肉と鹿の肉を一緒に入れて、食べさせる言うもの。
こんな鍋を食べさせられた方も、味は美味いが、心持は判然としないだろう。
しかし、話のタネになる分、ヘルシーよりも得な気がする。