太宰治の小説作品、「斜陽」の舞台となった別荘。
と言えば、神奈川県小田原市曽我谷津の「雄山荘」である。
地元出身である実業家の別荘として建築され、
昭和22年2月に、太宰自身が一週間滞在し、同小説を執筆したゆかりの場所である。
先程のニュースによると、今日の午前4時過ぎ、出火、その木造2階を全焼。
けが人は無く、放火の疑いもある模様。
太宰治、生誕100年の今年。
最後の最後に来ての、寂しい事件である。
斜陽と言えば、主人公であるかず子の母の如く、
スープを一さじ、ヒラリと小さな唇に滑り込ませる様な、
所謂「貴族」気質な人を見た事がない。
一番の原因は、私個人の生活環境に起因すると思うのだが、
それにしたって見ない。
逆に、主人公の弟である直治気質の人間なら、多く見る。
勿論これも、生活環境に起因する。
裕福。
つまり、潤沢な資産を持ち、生活、心身ともにゆとりある人。
と、貴族である人とは、共通項はあってもイコールでない。
俗な例えしか浮かばないが、一応、貴族と呼べる人の所作を例えてみる。
例えば、煙渦巻く屋台の焼鳥屋のカウンターでも、いやな顔一つせず、
むしろ上品と言える所作で、焼き鳥の串を口へ運べる人。
補足すると、焼き鳥の串を持って、箸で一つ一つ器用に皿へ取ってからつまむなんてな、
野暮な事をしなくても、と言う事。
戦前戦中に生まれた世代の人に、その気質を感じる。
つい、昨晩の事。
端唄、独々逸の発表会兼クリスマスと忘年会の要素を含んだ打ち上げ、に参加した。
その発表会で、琴を雅やかな音色で弾いてらした、独りのご婦人。
生まれは、戦中かと思われる。
いつも着物を召していて、何度か会話した事があるが、その方の所作言動を見ていると、
この斜陽のかず子の母を思い出す。
そんな事を思っていた矢先の、ニュースだったので、ちと感慨深い。