728声 柳川町酔夢ing

2009年12月28日

日が沈む頃になると、もう運転代行の車が、路肩に列を作って待っている。
御用納めの本日は、毎年恒例の光景である。
街の至る所で、大なり小なりの忘年会が催されている事だろう。
私などは、高崎市住まいと言っても、合併組。
つまりは、高崎市にくっ付いた隣町住まいなので、中心市街地に遠い。
なので、忘年会っても、中心市街地を外れる事が多いのだ。
確かあれは3、4年前だったと記憶しているが、暮れのこの時期に、
市街地の繁華街で行われた忘年会に出席した事がある。
高崎の夜の繁華街。
ったら、昔も今も、やはり柳川町が挙がる。
歴史ある酔街だけに、酒徒を引き摺り込む力は伊達じゃない。
形式的な忘年会がハネると、暖簾から暖簾へ、次々に誘われる。
実際に、覚束ない足取りで薄暗い通りを歩いていると、袖を引かれる。
振り返ると、正体不明のお姉さんが怪しげな眼光でこちらを見ている。
その独特の口調から、出身国は漠然と察しがつく。
細い路地を縫って歩く、まるで異次元空間のよう。
ほの暗い退廃的な路地の空気を吸う、まるで時間感覚が無くなる。
熱に浮かされる如く、よろめきながら電気館通りを抜けて、
中央銀座のアーケード通りに出る。
映画館。
「そう言えば昔、親父と一緒に夏休み、ゴジラの映画を見に来たっけ」
などと感傷の風に吹かれ、一気に熱も酔いもさめてしまって、
とぼとぼ歩きながら、ポケットの携帯電話を探している。
そんな調子だったが、たった3、4年前でも、今よりも随分と、
人出はあった様に思う。
無論、今は見る影もない。