736声 日課中毒

2010年01月05日

旦那と旅行へ行って、旅館やホテルへ泊る。
当然、仲居さんが上げ膳据え膳でもてなしてくれる。
起きて、蒲団を畳んで、朝食を作って、片づけて、などと言う日常の煩わしさから、
解放されるひととき。
それがどうしても我慢できなくて、雑巾を持って来て部屋の中を掃除してしまった。
と言う、女性の随筆を読んだ事がある。
その女性は、大正生まれの主婦。
所謂、「古風」な日本女性と言える。
この女性にとって、一切の家事から解放される事が、
安息ではなく苦痛となってしまったのだ。
自分から日課としている家事を取り上げられた事は、存在意義の消失に等しく、
その不安に苛まれてしまったのだろう。
現代では稀有な、日本的女性のエピソードであるが、
私も大晦日、その気持ちをほんの少しだけ察した。
暮れの仕事納めが終わり、不精な私は大掃除も何も放り出して、
炬燵に根を生やしていた。
元日以降は、新年の挨拶やら新年会やら俳句ingやら、出掛ける予定が目白押しである。
しかし、大晦日までは何も無し。
これは勤め人の特権とも言える。
のほほんと過ごしたって、バチは当たらないだろう。
と、太平楽を決め込んでいたのだが、どうも、尻の座りが悪い。
炬燵に入って横になって本を読んでいると、何だか、
背骨を猫じゃらしで撫でられている様な、むず痒さが走る。
堪らず、炬燵から這い出て、俳句の季語を調べたり、パソコンに向かったりしている。
どうやら、随筆の女性じゃないが、日課に浸食されてしまって、
もう日課無しでは生きられない体になってしまったらしい。