3889声 何も知らない

2017年07月01日

早朝の吾妻川沿いをバイクで走っていて、それは新聞代配の仕事なのだけれど、今年は梅雨だというのに全然雨が降らないなと、農家は大変だろうなと、そんな独り言が続いたけれど、6月の最後は梅雨らしい天気が幾日かあった。降ったら降ったで雨合羽を着たり、新聞を防水のためのフィルムでくるんだり、めんどくさい。どうも、岡安です。

 

今、中之条町の限られた地域の主に商店の取材をしている。全部で30数件回る予定で、やっと半分に届くところか。取材者としての力量は知れたものだが、僕が生まれ育った町なので、身近さ、話の合わせやすさは外部から来る取材者に比べて上回るのは当たり前のことである。今回は映像ではなく紙媒体で、それほど深い聞き取りは必要ないにも関わらず、近所話し含めてやはり話し込んでしまう。今日伺ったのは、スポーツ用品店、精肉店、米屋、畳屋。どれも開業は古く、後ろ3店についてはどこも主なお客さんが同じ町内にある四万温泉の旅館であった。

 

四万温泉と言えば、うちの祖母は積善館の住み込み女中から始めて、今僕が住む西中之条の家を女手ひとつで建てた人である。母も同じ積善務めで、渋川から魚を運んでいた父とも四万で知り合った。狭い町なので、取材先で「岡安です」と挨拶から始めると、取材内容とは関係がないところで、「うちの母は、君んちのおばあちゃんに大変お世話になったって言ってたよ」「うちの商品を卸してた先で、よくお母さんに会ったわ」という話しが出てくる。この取材については、成果物を残すことが第一目的であるけれど、それ以外のこういう会話をすること、知らなかった地元のことを知ることがとても面白い。そして、知ったようでいた自分の身の回りのことを何も知らないということに気付く。

 

家族に直接悪口を言う人こそ稀と思うが、祖母について父について母について、悪口を言う人に会ったことがなく、皆さん「いい人だった」と言ってくれる。素直に、嬉しい。