773声 Am7からD7

2010年02月11日

外は霙。
机上に置いたカップを口へ運ぶと、もう、珈琲が冷めている。
こう寒いと、外へ出るのが非常に億劫である。
なので、終日、部屋の中で逼塞していた。
昨年末の大掃除も満足にしていない、自分の部屋を、整理していたのである。
整理までは出来るのだが、掃除が出来ない。
机に山積している紙の束を、一つ一つ屑箱へ入れていると、
今年の年賀状が出て来た。
「結婚しました」
ってのが、その10枚程度の年賀状の中で3枚ある。
そのどれも、裏面、インクジェットプリンターで印刷されており、
片割れの知人が、伴侶と共に満面の笑みを浮かべている。
硝子戸の外、霙交じりの雨空から一筋の光明が差し込んでいるかの如く、
葉書紙面が、輝いて見える。
どの夫婦にも、運命的な物語があったからこそ、こんなにも輝かしい笑顔が、
毀れ落ちているのだろう。
そのコード進行は、Am7からD7。
私はと言えば、Am7とAmを、行ったり来たり。
葉書を集めて置いて、硝子戸を開けると、霙から雪へと変わっていた。
白い軒先の向こう、パチンコ屋の看板が、闇夜にぼんやりと、原色を輝かせている。