「お先に失礼します」
ひと声かけて出て行ったのは、常連のおじいちゃん。
その佇まいから推察するに、傘寿と米寿の間くらいの御歳だろう。
私との年の差、約半世紀。
「歩く銭湯の入浴マナー」とでも言う様なおじいちゃんの、その「精神」を、
文化財登録する術はないものか。
などと考えつつ、湯船の熱い湯に、必死に浸かっていた。
いささか風邪気味であったが、汗と一緒に風邪の野郎も叩き出しちまおうってんで。
その行為から、思わず文面が落語付いてしまうが、
ともかく、そう言う事で銭湯へ行った。
そして帰る時は、足取り覚束かず、前後不覚。
熱が上がって前後不覚なんだか、湯あたりして前後不覚なんだか。
おそらく、両方だと思う。
とんだ療法になってしまった。
駄洒落も前後不覚。
ならば今度は、麦酒を飲んで、小便と一緒に風邪の野郎も叩き出しちまおうってんで。

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