3858声 美味しい音

2018年06月07日

曇天にときおり青空ののぞく、梅雨らしい天気であった。
この時期は、気温よりも室内の体感が蒸し暑く、不快指数が高い。
夜、列車に乗っていた。
ホームで停車中、車内はまばらであったが、冷房がきいていなく、蒸し暑い。
斜向かいの席のサラリーマンは、扇子で忙しく顔を仰いでいる。
その奥の席あたりから、「カシュッ」と乾いた音がたった。
私を含め、車内の人たちはその音の方向に、何とはなしにちらちらと目を向けている。
その音の主は、結露した麦酒のロング缶を片手に、ぐびぐびとやっているではないか。
その光景よりも、すこし前に車内に響いたあの音のほうが、なんとも美味しそうであった。
斜向かいの席のサラリーマンは、扇子を閉じて目を瞑っていた。