タイムカプセル。
それを彷彿とさせるのは、古本である。
古本を買うと、時折、発売時に折り込まれていたチラシやリーフレットを、
そのまま頁に挟まった状態で発見する。
特に文庫本に多いのだが、後世、賞を獲って名を成す作家の新刊本の告知など、
興味深い内容が多く掲載されている。
その中、「読者アンケート」の葉書も、高い頻度で発見する。
先も一つ、手を伸ばした文庫本の頁に挟まっていた。
これが、とても懐古的で思わず、頁を捲る手を止めて、まじまじと観察してしまった。
まず表面、まだ郵便番号が3桁の時代。
次に裏面、記入方式がマークシートなのである。
だから、用紙全体が心持、黄ばんだ様に見えるのは、
経年劣化でなくマークシート用紙と言う事になる。
高校受験や、大学入試センター試験などで、幾度となくお目に掛かっていた、
そして、余り良き思い出の少ない、あの用紙。
この葉書、今は無き、旺文社文庫から出てきた物である。
文庫は無くなれど、現在、旺文社は元気に営業している。
よって、この葉書に切手を貼って投函すれば、
宛先の「旺文社書籍局愛読者カード係」に届く事になる。
その係が無くなっていても、確実に旺文社までは届くのだろう。
出版業界隆盛の時代。
旺文社文庫には、他社と一線を画す玄人向け志向が垣間見え、
廃刊になった現代でも、古本屋で見かければ、手に取る事が多い。
内田百?の旺文社文庫シリーズは、未だに私の憧れである。
鉛筆でマークシートを記入して、投函して見ようか。
などと、葉書を眺めていると、酔狂な考えが入道雲の如く、もりもり増幅する。
「過去からの手紙」
なんて、一寸、オツなものではないか。
もっとも、旺文社の担当係の方は、迷惑するだろうが。