913声 客に塩を送る

2010年07月01日

夏だから。
なのだろうか。
行きつけのうどん屋のつゆの味付けが、
いささか濃くなったように感じる。
その店は、立ち食いではないのだが、限りなく立ち食いに近しい店舗で、
カウンターの他、机が二つ置いてある座敷だけの、小さなうどん屋である。
平日客の大半を、近所の勤め人が締めており、皆、その滞在時間は10分程度。
とにかく客の回転が速く、「安い早い美味い」を地で行く店で、
私はとても重宝している。
その店の味が、最近、濃い。
もっとも、私のおろぼろげなる味覚なので、信憑性は怪しいが、
濃いと断言しないと、話の根幹が揺るいでしまうので、濃いのである。
健康には、盛夏でも塩分を控えた方が良いと言うが、
やはり夏は、塩辛い物を体が要求している。
だから、その店の濃い味のうどんが、以前にも増して美味く感じる。
それには、私が田舎者だと言う理由も、起因しているのかも知れない。
夏とは言え、体には悪い。
分かっちゃいるが、その店の塩辛いうどんの味に、知らぬ間に依存しており、
足が向いてしまう。
塩の依存性にも、馬鹿に出来ない力がある。
「敵に塩を送る」ならぬ、「客に塩を送る」と言う、
賢明なる店主の夏期戦略かも知れぬ。