昨日、首都圏に出る所用があったので、早朝、高崎駅から新幹線に乗った。
これが丁度、巷の通勤ラッシュと重なってしまい、駅構内は背広と学生服の洪水。
揉みくちゃになりつつ、新幹線口の改札を抜けると、
在来線口とは打って変わって、人も疎ら。
一足先にお盆がやって来たかの如く、穏やかに閑散としている。
もっとも、お盆休みの時は逆に、在来線よりも新幹線の方が満席と言う状況も多々ある。
平日のこの時間帯。
新幹線の乗客の大半は、新潟、あるいは群馬から、首都圏へ通勤だろう。
毎朝、田圃の畦道を、車でのろのろと通勤している身としては、
いささか羨ましく思える。
今、私の通路を挟んだ隣の列、一番奥の席に座った、背広の男性。
歳の頃、40がらみと思しき、サラリーマン。
暗色に薄いストライプ、その細身の洒落たスーツが、いかにも「都会の男」風である。
組んだ足の先から垣間見える、派手な紫色の靴下。
その先に付いている、焼き過ぎたコッペパンを思わせる細い革靴が、
忙しなく微動を続けている。
彼の全身からは、どこか怜悧な、都会の雰囲気が醸し出されていた。
この紫靴下男。
徐に背広のポケットから取り出したのは、iPhone。
やはり、都会に生きる者は時代の先端を求める。
などと思っていたら、今度は茶の革鞄を、ごそごそ。
次に、テーブルの上に取り出したのは、何とも旧時代的で無骨なCDウォークマン。
慣れた手つきでイヤホンを装着し、聞き始めたのである。
彼の一連の動作を横目で見つつ、胸中、咄嗟につっ込んでしまった。
「iPhoneで聞けよ」
紛れも無く、携帯音楽プレーヤーとしては、
CDウォークマンを凌ぐ機能を備えている、iPhone。
何故、そのiPhoneで聞かないのか。
CDウォークマンに、深い思い入れがあるのだろうか。
はたまた、聞く音楽が、英会話教材や自作楽曲作品等の、特殊なものであろうか。
まさか、使い方を知らない。
いやいや、この紫靴下に限ってそんな本末転倒な事は…。
思いは巡り、新幹線は駆ける。
窓の外。
流れる風景に目をやっているが、気になって仕様が無い。
慣れない行動は、いやはや、疲れる。