918声 砕け散った流れ星の物語

2010年07月06日

明日は七夕である。
七夕は明日なのだから、明日この内容を書けばよいものだが、
思い付いてしまったので、今日書く。
一年前の今時分、伊勢崎市の相川考古館で行われた、川柳会に参加した。
うろ覚えだが、席を囲んだのは、私を含め12、3名。
しかし、最優秀賞に選ばれた川柳だけは、鮮明に記憶している。
天の川渡り切れずに流れ星
なるほど、仄かにメランコリックな香り漂う、口当たりの良い川柳だと思う。
川柳としての善し悪しは、会の当事者が決める事なので、
この期に及んで言及するまでも無い。
問題は作者である。
作者は、Iさんと言う男性。
私よりも年嵩は随分と上の方だが、数年前から親しく付き合わせて頂いている。
と言っても、私がIさんと会うのは、十中八九、どこかの酒席である。
そして、酒席でのIさんに、私はいつも感心する。
それは、要望の貫徹だけを試みているからなのである。
その為、徹頭徹尾、女性を口説くのである。
私は未だかつて、Iさんが女性に対する悪口を聞いた事が無い。
反面、同性に対する悪口は、悪口に留まらず、罵詈雑言である。
それも、サラリと器用に川柳を詠む人だから、言葉の刺を絶妙に抜いている。
だから、座を心地よく沸かせるのが上手い。
先日も、とある酒席で久しぶりにご一緒したが、男などには目もくれていない。
しかし私は、Iさんと会うと、一緒に杯を重ねる事が多い。
「あんたはべつ」
と言う、何だか複雑な心境になる言葉を頂戴しているからだ。
その結末はと言うと、千鳥足で、街の闇に独り消え行くIさん。
と言った具合である。
先日も、酣になった酒席。
私は帰りがけに、空のジョッキ片手に、ぽつねんと虚空を見つめながら、
座っているIさんの姿を見た。
天の川を渡り切れない流れ星は、何の事は無い、自分だったのだ。
年に一度、天の川の橋を渡って逢う、織姫と彦星よりも、砕け散った流れ星の物語を、
私は読みたい気がする。