3998声 訪問者

2018年10月25日

夜、未知の男が訪ねてきた。
坊主頭で四十がらみの顔色の悪い男であった。
昔、裏のアパートに住んでいたから始まって、
いろいろと身の上話をしていたが、とどのつまり、
「二千円貸してください」という。
貸す理由も、義理もないのだが、貸した。
次は貸せない旨と、返却はポストに入れて置くよう伝えた。
男が去ったあと、いろいろと考えをめぐらした。
貸さなかったほうが良かったか、
五百円ないし千円だけ渡し、返却は不要としたほうが良かったか。
しばらくは、玄関先の闇に男の気配がまだあるような気がして、
なんとなく落ち着かなかった。