927声 マッコリの去り際

2010年07月15日

先日更新された「名店のしきたり」の第26回。
今回の名店は、伊勢崎市の「韓国居酒屋J」である。
私も、記事の筆者に何度か連れて行ってもらった事があり、
本文にもあるような韓国家庭料理を堪能した。
その中、私の持つ印象を、新しく塗り替えた酒があった。
マッコリ、である。
マッコリは、飲んだ事が無いでもない。
この酒とは、その程度の付き合い方だった。
焼き肉や韓国居酒屋へ大勢で行って、誰かが頼めば飲む。
自ら進んで注文した記憶はない。
しかし、この店の自家製のマッコリは、美味かった。
マッコリってのは、韓国の大衆酒。
酒類で言えば醸造酒で、まぁ日本で言うどぶろくに似ている。
醸造酒なので、当然、酵母でアルコール発酵させて、そのまま飲む。
マッコリの場合は、雑菌の繁殖を抑える為に乳酸発酵させる。
なので、一見、強そうな酒に見えるが、アルコール度数が麦酒程度に弱く、
ほのかに酸味があるので、口当たりがとても良い。
のったりと白濁した液面を見ると、ヤクルトでカルピスを割ったような感がある。
美味い事は、確かに美味いのだが、印象を新しくしたのは、その残り方、なのである。
酒が残るってぇと、当然、碌な事が無い。
あるのは、二日酔いと自己嫌悪ぐらい。
そこがこのマッコリは、違った。
「明日苦しむ覚悟」を決めた。
と言いたい所だが、現実は酒と状況に押し流され、
次々に杯を重ねていたこの日は、日曜の夜であった。
麦酒を飲んでマッコリを飲んで、また、麦酒を飲んでと言う始末。
千鳥足で終列車へ潜り込んで、明朝、驚いた。
予想に反して軽い。
体が、である。
つまり、マッコリが残っていないのだ。
あのアヤシゲな白濁からは想像し得ない、見事な去り際。
蒸留酒の焼酎やウイスキーだと、その液面はスッキリと澄んでいるが、
去り際がなんともよろしくない。
いつまでも、居座って、昨夜の復讐に精を出す。
酒と人は、見た目で判断できない所がある。
などと、格言めいた締め括りをしようと思ったが、止めて、蛇足する。
もしかしたら、韓国料理とマッコリの相性が良かったのかもしれないと、
書きながら思った。
そう言えば、唐辛子や発酵食品が多い韓国料理は、
いかにも新陳代謝が活性化しそうである。