4008声 豊洲にて

2018年11月04日

築地魚河岸山治(やまはる)さんとは長い付き合いだった。

 

新聞折込みで魚の注文をとり山治へ連絡、築地を出た長距離トラックを高崎市場で待ち受けて魚を仕入れ、県内の家庭に配達する「原町湊」という事業を中心的に行っていた時期もある。僕一人でもやれるコンパクトなものではあったが、築地にも度々打ち合わせに行き、帰りに食べた「豊ちゃん」のアジフライ定食であったり、「高はし」の煮魚定食だったりの味は忘れられない。魚配達の仕事はすでにしていないが、山治とは広報関係の仕事で未だにお付き合いがある。

 

みなさんご存知のように、平成30年10月6日に、東京都中央卸売築地市場はその役目を終えた。そして次の地は豊洲である。電車を乗り継ぎ初めて足を運んだ。築地市場が世界遺産的な味のある場所であったならば、豊洲市場は巨大物流センター的な無機質な場所であった。山治がある水産卸売場練は見学だけの入室はNGで、見学者には建物2回からマグロの競り場などを見られるコースがあるのだが、その普通さは退屈だった。

 

小型貨物車ターレーがびゅんびゅん行き交い商売人たちの罵声にも似た注文の発声が行き交う中で、写真をバシャバシャ撮る外国人観光者たちがいても気に留めない「懐の深さ」が、築地市場の奥の深さであった気もする。

 

何を食べて帰ろうか迷ったが、行列もなく馴染みもあった「鳥藤」で親子丼とカレーの合いがけを食べた。隣に座った仕入れ人らしきおじさんが、築地からの顔なじみと思われる店員に「売り場が広くてひどく疲れる。青果市場も遠いからついでに買えない。でも、この店と駐車場が近い。それだけだな、いいのは」と話しかけていた。

 

豊洲のこれからが、市場移転後も営業している築地場外市場のこれからが、人で賑わうものであって欲しい。