933声 プールカードと水着袋

2010年07月21日

38.9℃を観測。
昨日の最高気温を更新して、今年の最高気温記録保持市になったのは、館林である。
これが人間の体温なら、病院へ行って解熱剤注射の一本でも打っている事だろう。
しかしながら、お天道様に至っては、人間の打つ手が無い。
私たちに出来るのは、脳みそがうだってしまわぬよう、極力、炎天を避ける事くらいだ。
それでも、夏休みに入った子供たち。
元気に水着袋を振り回しながら、学校へ駆けて行く。
その光景に、プールカードと水着袋を持って学校へ向かう、
幼き頃の夏休みが思い出された。
その記憶映像には、何だか、暗欝な心持でとぼとぼと、
田の畦道を行く自分が映し出されている。
子供時分、プールが嫌いだった。
プールで仲間たちと泳ぐ事。
それ自体は好きだったのだが、プールの「授業」が堪らなく嫌だった。
ブーメランパンツを履いた体育教師が、首から下げた笛を、「ピッ」と鋭く吹くと、
横一列に並んだ私たちは、一斉に25mプールの向こう岸を目指して泳ぐ。
何だかそれは、調教師とイルカの様な、あるいは、将兵と兵卒の関係を彷彿とさせた。
つまり、服従させる者とする者。
その主従関係めいた形式が、プールを楽しむ私の子供心を、
たちまちに萎えさせたのである。
勿論、泳ぐのが遅いと、刺す様な怒声が飛んで来る。
しかし私は、先にも書いた様に、プールで仲間たちと泳ぐ事は好きなのだ。
夏休みはもっぱら、友達をそそのかして、近所の「町民プール」へ入り浸っていた。
入場料はかかるが、ここには、調教師も将兵もいない。
こちらの方が断然、自由闊達に泳げるし、そして何より、プールを楽しめる。
この日、私の部屋の勉強机上に放り投げてあるプールカードには、
私の下手くそな数字で、「38℃熱あり」と、記入してあるのだった。