938声 猫屋敷のお引っ越し 前編

2010年07月26日

つい先日の事。
宴もたけなわになった、酒席。
その後片づけに、皆、皿を運んだり、テーブルを拭いたり。
台所と居間を、行ったり来たりで、立ち働いている。
私は、窓脇の袋棚に腰掛け、団扇片手に、その光景を眺めていた。
酔いが回った覚束ない手元で、皿の2,3枚を割るより、
部屋の隅で静かにしている方が、得策ではないか、と思ったからである。
その心積もりが、当然、座の一堂に伝わる筈無く、
気の利かぬ不精者と言う印象を与えてしまった。
「すまぬ」
と心では思っているのだが、弁解の気持ちが団扇の爽風で、掻き消えてしまう。
私の知人に、「猫屋敷の女将」と言う人がある。
この日は、猫屋敷の女将が、元の猫屋敷から、新たな屋敷に引っ越したお祝い。
その引っ越しを手伝った人を労う、という名目で、夜、宴会が開かれた。
引っ越しも一切手伝わずに、宴会に潜り込んだ客。
と言うのが数名居り、私もその組の一派であった。
むしろ、話の運びでは、その一派の旗頭と言う印象らしい。
更には、手伝いもせずに豪勢な料理と大酒を食らっている。
挙句の果てに、後片づけもせずに、団扇を揺らしているなんざ、
我ながら、奸物だと思う。
その奸物に、心優しき人がお声掛け下さる。
「今、考えてますか」
「えっ、と言いますと」
「今日、書く事を、です」
書く事。
ってのは、即ち、この日刊「鶴のひとこえ」の事だと、
酔眼朦朧としながらも気付いた。
「まぁ、そんなところです」
なんて、悠然と嘯いたが、実際は、残り物をつまみ食いしようと思案していたのだ。
いよいよ、放つ言動が、自らを奸物足らしめてきた。
いささか、長くなりすぎました。
この続きは、また明日。