939声 猫屋敷のお引っ越し 後編

2010年07月27日

さてさて、昨日の続きから。
夏場なので、残った御馳走は、処分してしまう。
と言う旨の話し声が台所から聞こえて来たので、
私は焦燥感に駆られて、書く事どころではなく、ともかく食う事に徹した。
よって、大いに食い過ぎてしまったが、猫たちが居ないので、
捨てるよりは良いと思った。
この日、以前の猫屋敷に居た、女将の猫たちは、まだ引っ越して来ていなかった。
たしか、3匹ほどは居たろうか。
その変わりに自宅へ帰れなくなった酔っぱらいが、居間で数名、ひっくり返っている。
この新たな屋敷は、以前の猫屋敷と比べると部屋数も多く、
1、2階に空き部屋が多数ある。
にも拘らず、部屋の方々で人間がひっくりかえっている様は、
やはり、以前の猫屋敷を私に連想された。
この新たな屋敷が、以前の如く猫屋敷になるもの、時間の問題かと思われる。
私は、独り、2階の風通しの良さそうな6畳間で寝た。
そして翌朝、私が起床した時には、あっさりと全員居なかった。
居間の横を通ると、猫屋敷の女将が、独りぽつねんとテレビを見ていた。
私は台所へ行って、コップに蛇口の水を注いだ。
コップを口に着ける瞬間、見えた。
コップの底に浮遊している、黒い物体が。
フライパンのこげの如きその黒い物体が、何であるかは分からないが、
差し当たって、人体に目立った害は及ぼさないようである。
何故なら私が、夜半に水道の水を、がぶ飲みしていたが、現在、
至って健康状態は良好である。
二日酔いも無く、若干感じる胃もたれの原因は、今朝方の来訪者の方に頂いた、
コンビニのマンゴーパフェにある。
叩き起こされて、マンゴーパフェを平らげて、また寝たのだ。
ともあれ、引っ越して直ぐ、と言うのは、長年放置の故か、
水道管も本調子でない様子。
台所に差し込む朝日に、コップの水を透かしながら眺めると、黒い物体と一緒に、
そこに「書く事」が浮いていた。
ように見えた。
それを持って帰って来て、この文章でお披露目。
しかし、あの物体の正体は、一体何だろか。
以前にも、古民家の水道で、何度か見かけた事がある。
「こら、余計な事書くな」
と言う猫娘のごとくいきり立った、猫屋敷の女将の顔が、容易に想像できる。