依然として、暑い。
残暑である。
報道では毎日、今夏の熱中症における死亡者の数が更新されている。
そんな折だから、巷のラーメン屋などは空いているかと言うと、
これがどういう訳か、混んでいる。
私の行きつけの食堂も、ラーメンを主軸としたメニュー構成の店なのだが、
夏日にわざわざ熱いラーメンを食べに来る人がいるかと思うと、これが結構居る。
お客さんの大半は、肉体労働従事者の方々。
近所で道路工事をやっている人や、隣の工業団地に勤めている工員の人たちなど。
私の斜向かいに座って、ラーメンと丼飯をかき込んでいる、御一行。
首巻タオルのおやっさんがかけているのは、サングラス。
一見、そう見えるが、あれは溶接作業時にかける遮光眼鏡であろう。
その隣で、大盛ラーメンを啜っているニッカポッカの兄ちゃんは、
全身が素焼きした土器の如く、こんがりと焼けている。
毎日、炎天から直射される日光の為に、焼けているのだろう。
そんな光景を目の当たりにして、暑さとがっぷり四つに組んで戦っている戦士たちは、
意外と「涼」を求めないものだな、と感じた。
日がな一日、クーラーの効いた部屋なんかに居る、事務系の人。
カーエアコンを最大目盛りにして、飛び回っている、営業系の人。
いわば、暑さから逃げ回りつつも戦っている人たちの方が、
ざる蕎麦だとか、冷やし中華だとかで、「涼」を求めているような気がする。
前者と後者。
どちらが熱中症になり易いかと問えば、私は後者と答える。
これからその説明をつけるのが、医学にも栄養学にも通じていない私なので、
ここはひとつ、描写を極めて抽象的にする。
暑さと見合って、「ハッキヨーイ」と相撲を取った場合。
土俵に残れないのではなかろうかと思う。
後者が、である。
前者は暑さと真正面からぶつかり、がっぷり組んで、行事の気合い、
「ノコッタ、ノコッタ」
となる。
それに対して後者は、真正面からぶつかる暑さを交わそうとするが、
体勢を崩して、あるいはまわしを取られて、押し出し突き出し浴びせ倒し。
ってな具合に、あっさりと暑さに負けてしまう。
現に、私は依然として夏バテ状態継続中である。
兎も角、暑さには熱さをもって制す。
と言う事を食堂から学んだ。