昨日の続き。
佐々木女史。
そしてその友人共に、酒には滅法強い。
これが、男性陣敗北の一番の原因になってしまうのだが、話を進める。
何度目かの杯のやり取りの後、酒を進める後輩が、明らかに泥酔状態になってきた。
佐々木女史は、いつもの伝で、ビールジョッキ片手に平静を保っている。
ジョッキを傾けている佐々木女史の耳に入って来たのは、
呂律のもつれた男性陣の会話。
後輩が、先輩の方にしなだれかかって、なにやら耳打ちしている。
その声が、泥酔している事もあり、耳打ちから漏れ聞こえてくる。
「先輩、もうそーとー呑ましてるんですがね、相手のおんなども、
一向に潰れそうにないっすよ」
と言う様な塩梅の会話。
その瞬間に、否、佐々木女史と友人は、序盤から男性陣の魂胆に気付いていた。
つまり、「自分とその友人を酔い潰して、何かヨカラヌコトを企んでいるのであろう」と。
「それでどうなったんですか」
佐々木女史の酒癖を知っている私は、なんだか、男性陣に同情する様な心持で、
話のオチをせがんだ。
「友だちと呑み直して帰って来たわよ」
ビールジョッキを豪快に煽りながら、そう言い捨てた、佐々木女史。
男性陣は店で潰れてしまって、佐々木女史はそそくさと友人を引き連れ、
馴染みの店で飲み直して帰った、と言う。
なんとも、百戦錬磨の身のこなしである。
「そう言う場に居て、こわくないんですか」
一応、私は佐々木女史の後輩であるので、気を使って聞いてみた。
「アンタみたいなヒョロっちいのがいくら来ても、こわかないわよ」
私は、相手が悪かったと、ますます男性に同情すると共に、
二人組の仕掛けた、その安直な作戦を軽侮した。
そんな、とりとめもない昔の思い出話が、ふと思い浮かんだ。
時を経て、あの時佐々木女史の小噺に笑い転げていた私が、
現在は、結婚相談の勧誘を受ける年齢になってしまった。
その話を思い浮かべ、脳内劇場で芝居になぞらえると、
どうもその間抜けな後輩の役が、自分に適役のように思えてならないのである。
【天候】
終日、綿菓子の出来そこないの様な雲が、ぼんやりと浮かんでいた秋晴れ。
近隣の小学校でかいさいされているのであろう。
運動会の声が、風に乗って聞こえて来た。