4249声 店は生きている

2019年07月04日

渋川市に「いち林(いちりん)」という人気らーめん店がある。昼営業しかしていないのが不便だが、開店時には多くの人が店前に並んでいる。

 

もう15年くらい前だろうか。この店が古い店舗だった時も何度か足を運んでいた。店を仕切っていたのは今の店主のお父さんだったのか、らーめん以外にも定食ものがあった気がする。らーめんは醤油・塩を基本としたあっさりめで、でもなんだか丁寧に仕事しているな、おいしいな、というほっとする味だった。けれど一番印象に残っているのは、今の店主の奥さんらしき人が会計時に「ありがとうございました」ととても愛想良くおつりを返してくれる事だった。店の印象というのは、案外そういうものが大半をしめるのかもしれない。

 

新しい店舗で営業をはじめた直後も行った。メニューをらーめんのみに絞り、スープのとりかた、そのスープに合う麺の選択により気を配った仕上がりになっていた。店の前に停まる車の数はすぐに増えていったと思う。

 

2年ぶりくらいに立ち寄ってみた。券売機に書かれた「つみれ、おすすめです」にしたがってつみれ入りの塩らーめん。つみれには青葉と軟骨が入っていてコリコリしておいしい。チャーシューは生ハムのような今時ではあるが僕好みな風味になっていた。パツパツの中細麺は歯切れよく、スープはより一層に洗練された印象。ここ数ヶ月で東京の繁盛店で何度からーめんも食べたが、それに全く負けない、むしろ群馬まで、渋川まで食べに来いよ!と言いたくなるようなおいしいらーめんだった。

 

店は生きている。それを生かす殺すは店の努力とお客さんの愛着次第だが、おいしい店はもちろん、それほどじゃない店だって、何年、何十年と通ってみれば特別な思い入れが残り、一人一人の思い入れがやがて、目に見える形で店の血や骨になる。