4359声 職業監督

2019年07月14日

「旅ルミネ meets 中之条」には、「伊参スタジオ映画祭」の宣伝のために参加したのだった。

 

今でこそ映画祭の実行委員長などしているが、2000年に行われた第一回目の映画祭には、たまたま客として出かけた。映画学校に通っていたが、撮影のために地元中之条町に戻っていた。この映画祭の成り立ちを簡単に説明すると、1996年に『眠る男』(小栗康平監督)と『月とキャベツ』(篠原哲雄監督)という2本の映画が公開され、その撮影地だった中之条町に『月とキャベツ』主演の山崎まさよしさんのファンなどが数多く訪れることになった。そして撮影拠点となった木造校舎には資料展示室が設けられ、地元の町おこしグループと山崎さんファンがチームとなり、中之条町役場の全面的なバックアップにより映画祭が立ち上がったわけである。

 

その映画祭の立役者として外せないのが、篠原哲雄監督である。篠原さんはとにかく面倒見が良い。映画祭発足時も、山の中の名もなき映画祭に俳優を呼んだり、知り合いの映画人づてで上映する映画を推薦したり、その後はシナリオ大賞という骨の折れるシナリオコンペの審査員も15年以上続けてくださっている。このルミネのイベントでも「映画祭でトークしていいらしいんですが、来てもらえませんか?」と送ったら「その時なら行ける」と即答いただいた。実際今日のトークでも篠原さんファン、山崎さんファンが新宿まで来てくれた。

 

日本アカデミー賞にもノミネートされるような監督だが、その風貌は周りを和ませる熊さんのごとし。現場でも真剣でこそあれ荒れるところも(僕は)見たことがないし、その日集まったエキストラにも丁寧に芝居のアドバイスをしたりする。「僕は脚本を書かないし、依頼があれば学園ものでも時代劇でもやる。職業監督なんですよ」という篠原さんのことを、年を隔てるごとに僕自身も好きになっている。