1018声 機械仕掛けの街 前編

2010年10月14日

機械音痴。
と言う訳でもないのだが、機械を前に、冷汗三斗で小銭を握りしめていたのは、
つい先日の晩。
その場所は、何の変哲もないチェーン店のラーメン屋である。
その店の注文システムは、食券販売機で食券を買う、と言うもの。
という事実が分かったのは、私がカウンター席に座った瞬間。
店員が、メニューを探している私に向かって、極めて無愛想に、
「あっ、食券買ってくださーい」
と、指摘したのである。
慌てて私、入り口横の食券販売機まで戻って、ラーメンを選んだ。
選んだ、のだが、メニューが複雑で、少々モタついてしまった。
そこに、入口が開いて、入って来たのは、二人組の兄ちゃん。
私は急激に慌てふためきつつ、もう半ば前後不覚になり、
千円札を突っ込んでボタンを押した。
「ポトリ」
と落ちて来た食券の紙を握りしめ、一安心。
先程の店員に差し出し、漸くラーメンを注文する事ができた。
「麺のかたさは」
「あーっ、ふと、いや、ほそっ、じゃなくて、ふ、ふつーで」
「スープは」
「えっ、あっと、うぅ、ふ、ふつーで」
食券を出してからも、細かにラーメンの仕様を選べるシステムだったのだ。
私のような、注文システムを理解していない一見客が多数来るのか、
店員は慣れたあしらい方で、「めんどくせぇなぁ」と言う表情を隠していなかった。
やっとの思いで、今度こそ注文を終えた私、気付けば体には濃い疲労の色。
そそくさとラーメンを啜って、店を後にした。
私が店を出る時、
「ありがとうございました」
ってな店員の言葉は、レジで会計しないので、勿論無い。
それが、この店のシステムなのだ。
これが話の粗筋。
明日は、私の感想を記して締め括ろう。
【天候】
終日、曇り。
雲間から薄日の射す、穏やかな日。