起床して、仄かなる二日酔い。
寝床を畳んで、寝間着を着替え、顔を洗って歯を磨き、早速、銭湯へ出掛けた。
目指すは近所の、ではなく、茨城県筑西市の、銭湯である。
新前橋駅から、両毛線の小山行きへ乗車。
終点で水戸線へ乗り換えて、下館駅で下車。
所用時間は、およそ2時間弱。
薄い文庫本を、一冊読み終えてしまった。
下館駅から向かったのは、市内に在る銭湯「松の湯」である。
駅前は閑散としており、類型的な地方都市と言った印象だが、
一本路地を入ると、古い飲み屋横丁がある。
まだ灯っていない赤提灯の軒先を、見物しながら歩いて行く。
他所者と察知したのか、黒猫が一匹、神社へ続く石段から、私を監視していた。
松の湯へ着いた時刻は、開店15分前。
しかし、常連と思しきお爺ちゃんの先客が一人、一番湯を待っている。
私も続いて並び、暖簾が掛かるや否や、脱衣場へ飛び込む。
番台のおやっさんに350円を差し出し、ついでにカメラも差し出し、
写真撮影のお願い。
脱衣場の方々の協力を得て、俊敏に数枚シャッターを切る。
浴室の真ん中に、椅子がピラミッド型に積んである。
これが、ここ松の湯のしきたりらしい。
皆、ここから取って、またここへ戻す。
未だ明るい間のひとっ風呂は、実に清々しくて、気持ち好い。
珈琲牛乳を一本飲んで、帰路へ着く。
「じゃあ、また来ます」
「次来る時はもう無いかもよ」
なんて、番台のおやっさん。
寂しい事言うが、ここは筑西市に残る最後の銭湯であり、
残すべき価値のある、実に良い湯だ。
帰りもまた、駅前の目抜き通りに在る小さな書店で買った文庫本を、
新前橋へ着く前に、1冊読み終えてしまった。
両毛線は沿線に学校の多い為か、制服の学生が多く乗車する。
座って、俳句の本など読んでいる自分を俯瞰し、
「年取ったなぁ」なんて、改めて実感した。
【天候】
終日、鰯雲がぼんやりと浮かぶ、穏やかな秋晴れ。