1020声 しもだての銭湯

2010年10月16日

起床して、仄かなる二日酔い。
寝床を畳んで、寝間着を着替え、顔を洗って歯を磨き、早速、銭湯へ出掛けた。
目指すは近所の、ではなく、茨城県筑西市の、銭湯である。
新前橋駅から、両毛線の小山行きへ乗車。
終点で水戸線へ乗り換えて、下館駅で下車。
所用時間は、およそ2時間弱。
薄い文庫本を、一冊読み終えてしまった。
下館駅から向かったのは、市内に在る銭湯「松の湯」である。
駅前は閑散としており、類型的な地方都市と言った印象だが、
一本路地を入ると、古い飲み屋横丁がある。
まだ灯っていない赤提灯の軒先を、見物しながら歩いて行く。
他所者と察知したのか、黒猫が一匹、神社へ続く石段から、私を監視していた。
松の湯へ着いた時刻は、開店15分前。
しかし、常連と思しきお爺ちゃんの先客が一人、一番湯を待っている。
私も続いて並び、暖簾が掛かるや否や、脱衣場へ飛び込む。
番台のおやっさんに350円を差し出し、ついでにカメラも差し出し、
写真撮影のお願い。
脱衣場の方々の協力を得て、俊敏に数枚シャッターを切る。
浴室の真ん中に、椅子がピラミッド型に積んである。
これが、ここ松の湯のしきたりらしい。
皆、ここから取って、またここへ戻す。
未だ明るい間のひとっ風呂は、実に清々しくて、気持ち好い。
珈琲牛乳を一本飲んで、帰路へ着く。
「じゃあ、また来ます」
「次来る時はもう無いかもよ」
なんて、番台のおやっさん。
寂しい事言うが、ここは筑西市に残る最後の銭湯であり、
残すべき価値のある、実に良い湯だ。
帰りもまた、駅前の目抜き通りに在る小さな書店で買った文庫本を、
新前橋へ着く前に、1冊読み終えてしまった。
両毛線は沿線に学校の多い為か、制服の学生が多く乗車する。
座って、俳句の本など読んでいる自分を俯瞰し、
「年取ったなぁ」なんて、改めて実感した。
【天候】
終日、鰯雲がぼんやりと浮かぶ、穏やかな秋晴れ。