4595声 踊るor踊らない

2020年11月18日

今年になって前橋文学館の映像仕事を引き受けさせていただくことになった。魅力的な場所だと思ってはいたが、文学館の看板ともいうべき萩原朔太郎はなかなか読みが進まなかったし、同じ前橋のアーツ前橋の文学館との共同企画の撮影で足を運んだことはあったが、それ以外には1度2度行ったかどうかという場所だった。

 

が、やはり仕事で行って記録をするから、という理由が大きいとは思うが、実に魅力的な取り組みをしている場所なのだと知った。僕が関わってからも詩人の和合亮一氏、映像作家の安藤紘平氏、作詞家であり詩人であった佐藤惣之助氏、そして現在展示がされている絵描きの田村セツコ氏、朔太郎の娘であり作家・ダンサーでもあった萩原葉子氏とさまざまな表現者たちを紹介し続けている。

 

現在、1階では「なぜ踊らないのー生誕100年記念 萩原葉子展」に合わせて、太田市在住の演出家・加藤真史さんが葉子さんの手記を題材とした創作劇「わたしはまだ踊らない」の映像が上映されている。その撮影を担当した。劇の撮影はこれまで機会がなく、文学館の仕事がはじまってから撮るようになった気がするが、実に面白い。

 

劇では、偉大な詩人の娘として比較され肩身の狭い思いをしてきた葉子が、作家として自立していくそのきっかけと葛藤が描かれている。「これからも亡き父(朔太郎)のことを書き続けるべきだ」と諭す文化人の言葉を遮るように、葉子は「わたしは自分が書きたいものを書く」と言い放つシーンがある。すこぶるカッコ良い。

 

踊る、という言葉が展示に、この劇に使われているのは葉子さんが後に身体表現も行うようになったからなのだが、実際の踊るという行為を指す以外に「無我夢中になってやる」という言葉の代わりとして「踊る」が使われることがあるように思う。その言い回しもとても格好が良い。

 

あなたは、なぜ踊らないの?