1023声 裏に廻る心境

2010年10月19日

偶に車で通る十字路の脇に、道祖神が一体ある。
田圃の畦に在るその道祖神は、「双体道祖神」と言って、
男神と女神が一緒に掘られているもの。
背丈は、柴犬と大体同じ位。

「墓のうらに廻る」
と言う、尾崎放哉の句ではないが、
「十字路にある、あの道祖神のうらへ廻ってみたい」
と言う衝動に駆られた。
それが今朝、洗面所の窓から、稲刈りの終わった田圃を眺めつつ、
歯を磨いている時の事だった。

自宅からはそう離れていないので、
畦道に車を止めて、道祖神まで歩いて行った。
道祖神の前でうろうろしているものだから、
十字路を通る車は、私に怪訝な眼差しを向けて行く。
早速、裏に廻って、また表に戻ってみた。
そう言えば、諏訪に有る「万治の石仏」ってのも、
「よろず、おさまりますように」と唱えながら三周廻ると、御利益を得られる。
ってな事が、立札に書いてあった。

さて、道祖神の裏に廻った。
刻まれている年号は風雨による劣化で読みとれなかったが、
丸みを帯びた道祖神の背、と言うのもなんだか郷愁があって、また一興。
道祖神の表には、緑青の浮いた十円玉と、刈られて間もない、
色とりどりのコスモスが一束、供えてあった。

「裏に廻りたくなる」
と言う心境ってのは、
「表には無いものを見たい」
って時なのではなかろうか。
どこか、正道を行けない後ろめたさ、ってな心境なのでは。

【天候】
終日、薄曇り。
里山ではコスモスが咲き競っている。