5099声 行き届く範囲/余白

2022年04月25日

東吾妻町「Serenite」の進撃が止まらない。といっても、飲食店としてお客さんが列を成して爆売れして早くも2店舗目か?ということではない。店のリーフレットを担当しているのでそれを口実にたまに行ってご飯を食べるのだが、お客さんがいない時もある。そもそも席数も全然多くない。

 

けれど、1度行った人が「特別な場所」として度々通っているのを、話やSNSを通じて知っている。こんなところに店が?という吾妻谷の途中、車を止めて小さな坂を上がると古くきれいな小屋がある。緑の木戸を開くと店主の安田さんがこんにちは、と出迎える。店の中はアンティークで統一されておりどこを見ても落ち着く。提供される食事は地野菜を中心にし毎回内容が少しずつ変わり、それぞれの食材が最も美味しい調理・組み合わせを味わうことができる。ゆっくり食べて、窓の外の山並みをぼんやりと眺める。ヴィーガンレストラン、ということではなく、ドリップコーヒーと手作りスイーツが食べられるのも良い。

 

飲食店には色々な種類があるが、Sereniteは安田さんの気配りが全ての場所に行き届いている。けれどそこに、アンティークな建物や家具がもっている時間、周囲の自然、人工ではない有機が混ざることにより、静かな余白が常にある。それはもしかすると料亭という形式が持ち合わせていた性質なのかもしれないが、もーっとずっとラフ。行き届いた気配りと豊かな余白を持ち合わせている店は、とても少ない。

 

「Sereniteは店じゃなくて場所なの」と安田さんが言ったと聞いた。その断片くらいは伝えられるリーフレットが作れたとも思っている。今後のむふふな計画も聞いてしまったので、また仕事と称してあの場所へ行くことにする。