5420声 ギアチェンジ

2023年04月11日

仕事のないつらさが予定の立たないつらさならば、やることが多すぎて予定が立ちすぎるつらさというのもある。予定が立つというのは、車で言うならギアを入れる状態のことで、予定が立たない、というのはギアを入れない状態か、あるいは低速ギアでいる状態に似ている。予定が立つことに安心を感じることもあれば、予定がないことに安心を感じることもあるのが人間かもしれないが、それは人それぞれで、それは、ギアチェンジの組み合わせは人それぞれ、ということであって、ギアチェンジをする人がいればしないですむ人もいる、ということではないと思う。ギアチェンジをしないですむ人、なんていない。自分以外の何かから要求されたことに従属し続けることができるならばそれも可能なのかもしれないが、従属であれ所属であれ、そこに合わせるためにギアチェンジをするのは自分以外の誰かじゃなく結局自分、と考えるほうが無理がない。うっかりしやすいのは、ギアチェンジはオートマチックに変わると思い込みやすいところである。若ければギアの間違いもガソリンがたくさんあるからやり過ごせるが、歳をとってギアの入れ方を知らないとすぐにガス欠か、故障する。要するに、人間はいつかギアチェンジを覚えなければつらさばかりが増していくということである。大事なのは、低速ギアを知るということだと、とくに、主体的であることに心地よさを感じる傾向にあるタイプはとくに、低速ギアを知ることが大事だと思う。低速ギアとは、最も今に近いモードである。高速ギアは、どうしても先のことに気が行く。そうするとつい、今がおろそかになりやすい。何を言いたいのかというと、生活のあらゆる場面で今に戻る瞬間を意識的に知ることが、自分を保つことにそのままつながると、最近思う。信号待ちのときこそ、人間が試される。