5530声 真ん中を行く

2023年07月30日

常連ではないが、よく行っていたお店のご主人が急逝した。まだ60歳前、いつも朗らかで、数日前までいつものように仕事をされていて、こんな田舎町で店も繁盛させていた方なので、通夜に参列した人たちの顔は皆納得がいかないような悲しい顔だった。つらい通夜だった。

決算直後だからというわけではないが、ふと仕事や経営について考えることがいつもよりは多い月だった。楽しい仕事しかしていないように外から見られているんだろうなと思いつつ、実際そういう仕事が多いから感謝しかないのだが、何をやるべきかの選択、そしてお金を稼ぐことの難しさは頭から離れることがない。同じようなメディア個人事業をしている若い知人が、今の仕事では立ち行かないとSNSに書き込んでいるのを見て、僕は何もできないのだが(彼が、というわけではなく社員を増やすスタミナや指針は今持ち得ていない)、才能がある人がやっていけない世の中はきついなと思う。

仕事について考えると、たまに浮かぶ話がある。以前所属していた経営者団体が行った講演会で、成功した経営者が話していた内容だ。映像記録もしていたのでより覚えている。ざっくり思い出すと「経営と人助けを混合している経営者がいる。これが大変いけない。仕事をきちんとせずに、東北のボランティアに精を出す男がいた。利益も出せず会社はボロボロ、税金もろくに払えない。私はこの男を叱りたい。道の真ん中を歩かず、端っこを歩けと言いたい。利益を求めない経営者は悪です。」

聞いてから5、6年が経っているから僕の悪意?も混じってるかもしれず、内容が少し違うかもしれないがキツメの口調で講師はそう話していた。聞いていた経営者たちからは是も非も伺えなかったが、僕は非常にその考えが<嫌>だと思ってしまった。そして、それが嫌だと思う僕はやはり経営者にはなれないのだろうな、と思った。

人の生き死にを目前にすると、そんな経営講演会の話など関係ねえなと思ってしまう。であるから今後も弱小会社の域を出られないのかもしれないが、人は誰しも真ん中を歩いていけると思う。様々なつらさやボロボロの内情を抱えながらも、死ぬその日が来るまでは生きたいのである。