次の日曜日に上野村のイベントにスタッフ参加するので、例年撮影している地元のバレエクラブの発表会が撮影できない。ということで、前橋市に事務所を構え、主には僕が頼まれて運動会や発表会の撮影をお手伝いしている(株)フレームアートに撮影を依頼する。快く引き受けてくれたのがありがたかった。事務所を訪ね、撮影の段取りを説明する。
用事が終わり、お腹が空いていたので遅い昼飯を腹いっぱい食べてしまった。そのまま帰るのもなと思い、車を停めて前橋を歩くことにした。上毛大橋を渡る。風はそれほどないが、春の暖かさはまだちょっと遠い。遠くに見える赤城山方面は白く霞んでいる。
この上毛大橋を渡る度に思い出すことがある。コロナ禍の真っ最中。アーツ前橋に関連して何度か撮影もしていたアーティストの後藤朋美さんから連絡があった。「不要不急の外出をしなくなったことで、空気が澄んで、山がきれいに見える。それを撮影したい。」という誘いだった。僕もその頃、それまでの仕事ができず時間もあったような記憶がある。待ち合わせて日中、上毛大橋の上に立ってみると・・確かに山がくっきり、美しく見える。今振り返ってみるととても不思議な撮影であり、不思議な一日だった。
それから5年以上が経った。車通りも多く、白く霞んだ山々を見て僕はなんだか<寂しく>なった。あの頃はみんな、足りるものでどうすれば幸せに暮らしていけるかを考えていた気がする。ステイホームが明けて、すっかり元に戻ってしまった。「大切なものを忘れていないか?」それは、自分への問いかけなのだと思う。