1085声 大衆的を、楽しむ

2010年12月20日

先日、一寸、暇な時間を持て余して、夕方。
庭先に七輪を出して炭に火をおこし、
夕餉のおかずにする為、目刺しを焼いてみた。

「目刺し」ってぇと、昭和の丸テーブルの朝食。
と言う景と共に、安価なおかずの代表選手と言う印象がある。
近所のスーパーで購入したのだが、一パックに、4匹刺しが3つ。
計12匹で、およそ200円、一匹およそ17円。
現代でも、安価なおかずの代表選手入りは、間違いないだろう。

木がらしや目刺にのこる海のいろ    芥川龍之介

と言う状況を気取りつつ、団扇で仰ぎながら、丹念に焼いた。
銭湯も、大衆食堂もそうであるが、目刺しを、「あえて」、
趣向として食べるのだから、楽しみながら、焼かねばならぬ。
しかし、趣向として食べられる位の余裕も無いのだが、それはさておき。
既に、瓶麦酒は冷蔵庫に冷やしてあるので、準備にぬかりは無い。

いささか、はらわたが出てしまったが、ほどよく、こんがりと焼けた。
これと、良く冷えた麦酒で、暮れなずむ空を眺めながら、一杯。

失せてゆく目刺のにがみ酒ふくむ    高浜虚子

大衆的って事が、必ずしも品格を落としめるとは限らない。
大衆的な物にこそ、心の深くに響く、味わいがある。

【天候】
終日、穏やかな冬晴れの一日。
冬型の気圧配置が緩み、11月中旬の暖かさ。
雨の降る前の日は、決まって暖かく、飛行機雲が見える。