1092声 賀状配達員

2010年12月27日

街中のあちらこちらで見受けられるのは、冬休みの高校生たち。
賀状配達員の、アルバイトである。
寒風に頬を染めながら、立ち漕ぎで自転車を駆って行く。

年末の風物詩となっている光景だが、この光景を見ると、懐かしい。
と言うのは、私も学生時分に経験があるから。
我が幾多のアルバイト経験の中で、愉しく打ち込めた仕事であった。
ある年の正月。
年末に降った雪が日陰に残っており、非常に危険な路面状況で、
年賀状を配達した事もあった。
その時分。
私は大学生だったので、自転車で無く原付。
あの郵便局の、白と赤色のスーパーカブで配達していた。
派手に滑ってこけて、傷だらけになりながら、配り終えたのも、
今となっては、いい思い出である。
思い出した年賀状配達にまつわる俳句では、こんな句がある。

賀状完配われ日輪に相対す

作者は、磯貝碧蹄館。
郵便局に勤めていた俳人として、有名である。
私には、先に記したアルバイト経験が、この句に強い共感を呼ぶ。
未だ明けきらぬ元旦の朝。
配達員たちは郵便局を、一斉に出発する。
地元の新聞記者や、偉い局員などがたくフラッシュの中、
白い息を棚引かせて、街へと漕ぎ出す。
籠に目一杯詰まっている年賀状を、一心不乱に配って行く。
そして、すっかり陽が昇り切った空の下、心地よい疲労感と共に、
郵便局への帰路を行く。
自転車には、空になった籠。
すっきりと晴れ渡った空には、元旦の日輪。

現在巷で、鼻水垂らしながら自転車を漕いでいる、
アルバイト配達員たちも、感じるのであろう。
賀状完配した時の、充実感と、自分で稼い給料の、満足感を。

【天候】
終日、冬晴れの一日。