街中のあちらこちらで見受けられるのは、冬休みの高校生たち。
賀状配達員の、アルバイトである。
寒風に頬を染めながら、立ち漕ぎで自転車を駆って行く。
年末の風物詩となっている光景だが、この光景を見ると、懐かしい。
と言うのは、私も学生時分に経験があるから。
我が幾多のアルバイト経験の中で、愉しく打ち込めた仕事であった。
ある年の正月。
年末に降った雪が日陰に残っており、非常に危険な路面状況で、
年賀状を配達した事もあった。
その時分。
私は大学生だったので、自転車で無く原付。
あの郵便局の、白と赤色のスーパーカブで配達していた。
派手に滑ってこけて、傷だらけになりながら、配り終えたのも、
今となっては、いい思い出である。
思い出した年賀状配達にまつわる俳句では、こんな句がある。
賀状完配われ日輪に相対す
作者は、磯貝碧蹄館。
郵便局に勤めていた俳人として、有名である。
私には、先に記したアルバイト経験が、この句に強い共感を呼ぶ。
未だ明けきらぬ元旦の朝。
配達員たちは郵便局を、一斉に出発する。
地元の新聞記者や、偉い局員などがたくフラッシュの中、
白い息を棚引かせて、街へと漕ぎ出す。
籠に目一杯詰まっている年賀状を、一心不乱に配って行く。
そして、すっかり陽が昇り切った空の下、心地よい疲労感と共に、
郵便局への帰路を行く。
自転車には、空になった籠。
すっきりと晴れ渡った空には、元旦の日輪。
現在巷で、鼻水垂らしながら自転車を漕いでいる、
アルバイト配達員たちも、感じるのであろう。
賀状完配した時の、充実感と、自分で稼い給料の、満足感を。
【天候】
終日、冬晴れの一日。