1134声 ミュンヘンの剣豪

2011年02月07日

先日、古本屋で、古本を一冊、衝動買いした。
「日本剣豪列伝」著・直木三十五(河出文庫)、である。

勿論、面白そうだから買ったのであるが、
購買の引き金となったのは、「上州」の一文字。
頁を捲っていたら、上州の剣豪に関する内容が、所々に見られた。
確かに、上州は元来、武芸の盛んな地域でもあるので、当然である。
しかし、本文の焦点は、本の内容ではなく、本に挟まれていた、
「しおり」に当たる。

帰宅して、徐に本を読もうと頁を開くと、しおりの入っている頁が開いた。
しおりを取り出して見ると、それはしおりでなく、
「生ビール一杯券」と印刷されたチケット、なのである。
黄色の色上質紙に、赤文字で記載されている店名は、「池袋ミュンヘン」。
そのコピーには、「パイプオルガンが楽しめる」とある。
有効期限は、61年7月31日。
勿論、昭和であろう。

インターネットで調べると、この池袋ミュンヘンとは、
池袋では有名だった老舗ビアホール。
過去形なのは、平成18年に惜しくも閉店してしまったらしい。
それにしても、しおり代わりに挟んであった、昭和61年のチケットが、
25年の時を経て、今、私の手元にある。
本の内容よりも、その状況の方に、魅かれてしまう。
全所有者は、ミュンヘンでビールジョッキ片手に、
本書を読んでいたのであろうか。
それとも、歴代の購入者が皆、このチケットを挟んだまま、
手放して行ったのか。

印刷されている、池袋東口の地図。
駅前の、「キンカ堂」と「富士銀行」が、郷愁を誘う。

【天候】
終日、穏やかな快晴。