1142声 湯温問題勃発中

2011年02月15日

巷間で、と言っても、高崎市街の裏街の一部地域での話。
そこで今、一寸した、問題が起こっている。
と言う事を、行きつけの食堂で、常連のおやっさんから、聞いた。
何故、そのおやっさんが問題の話を私に持ち込んだかと言うと、
それが勃発している場所が、銭湯、だからである。

その地域には、かつて2軒の銭湯があった。
仮に、「風の湯」と「呂の湯」としておこう。
昨年、風の湯がその長い歴史に幕を下ろし、
残念ながら、廃業してしまった。
すると、幾年も風の湯を贔屓にしていた常連さん。
銭湯と言うと、自然、近所にある呂の湯に足が向く。
それが、問題の火種となった原因なのである。

呂の湯の湯温が熱いと言う事は、その地域では常識とされていた。
反面、風の湯の湯温は、呂の湯よりは幾分温く、
私も初めて伺った時分に、随分と入り易かった印象がある。
さて、呂の湯に通う様になった、風の湯の元常連さんたち。
呂の湯の湯船に浸かっている時に、こぞって、
水をジャバジャバ出して、うめてしまうのだと言う。
風の湯の適温を、呂の湯でも実現しようと言う試み。

これで面白くないのが、呂の湯の古い常連さんたちである。
それまで、伝統とされてきた呂の湯の熱湯を、
他所者に容易く温湯にされてたまるか。
ってんで、正面切って指摘したと言う。

「ちょっとすみません、ここは皆、熱い湯が好きで入ってますから、
あまりうめないで頂けますか」

おそらく、こんな丁寧語ではなかったと思うが、
大体、こんな調子であろう。
すると、風の湯の元常連さん。

「いえ、ね、あたしもあなたと、同じ湯銭を払っているんですから、
私にも、湯をうめる権利ぐらいあるんじゃないでしょうか」

「権利ときましたか。いや、呂の湯が熱湯ってのは、
もう、伝統ですからねぇ、ここいらの」

「伝統ったって、ここは銭湯なんですから、
銭を払った者が、快く風呂に入る場所なんですから、
あたしゃ、何と言われようがうめますよ」

「分からねぇ、野郎だね、まったく」

と言う具合に、常連さん同士で、問題が勃発しているらしい。
私に話してくれたおやっさんは、呂の湯の古い常連。
なので、勿論、熱湯に入りたいのだけれど、最近はこの問題で、
いささか湯が温いと嘆いていた。
それを聞いて私。
大岡越前の様な名裁きが下せる筈もなく、
曖昧な相槌を打ちながら、ただただ、ラーメンを啜っているばかり。
ラーメンがいささか温くなっていた。

【天候】
朝は雪雲が残っていたが、直ぐにすっきりとした快晴。
降り積んでいた雪も、午後には綺麗に溶けていた。