1146声 輝いていた時

2011年02月19日

今週末で、榛名湖の公魚釣りもシーズンオフ。
と言う話題が、昨日の雑談の中で出た。
今年は3年ぶりに結氷したので、公魚の釣客も、
久しぶりの穴釣りを存分に楽しんだ事だろう。
公魚が終われば、次に、3月上旬の渓流釣り解禁を、
待つばかりであろう。

私は久しく釣りをしなくなってしまったが、以前はしていた。
今から一昔前、渓流釣り解禁の時期に、釣りへ出掛けた事があった。
場所は、当時の倉渕村。
渓流釣りなので、狙うのは、山女、岩魚、虹鱒などの渓流魚である。
快晴の空が薄く橙色に染まってゆく、夕まづめ。
手頃な岩の上から、川面に向かって竿を振る。
糸の先についているのは毛針、すなわち、テンカラ釣りと言う釣法である。

魚の当たりは断続的にあるものの、自らの腕も相まって、
中々、釣り上げられない。
徐々に、山間から黄昏が近づいてくる気配。
ふと、辺りを見渡して、手を止めた。
沢一面に、ひとつひとつの光が、群れをなして浮遊している。
私もどうやら、その光の群れに、包まれている。
のだが、どうした事だろう、衣服には、無数の羽虫が次々に付着。
そうなのである、この羽虫は、かげろう。
いま、まさに、孵化したばかりのかげろうが、
百万匹の群れとなって川原に浮遊している。

それに呼応するように、川面では、渓流魚たちがかげろうを捕食すべく、
さざめきたっている。
一挙に騒がしくなってきた沢で、ひとり取り残されている、私。
結局、その日の釣果は、うぐいを2、3匹だったと記憶している。
それよりも、私の記憶に焼き付いているのは、あの時の沢の光景である。
西日の射し込む渓流に、無数のかげろうの羽の輝き。
川面の輝き、魚の輝き、そして、太陽の輝き。

【天候】
終日、雲一つない快晴。