「潔く入れ」
語気の荒い言葉が、飛んできた。
その言葉に背中を押される様に、浴槽に片足突っ込んでいた兄弟。
決死の思いで、浴槽の中へ、体を埋めて行く。
それは、私が先程、高崎の銭湯で見た光景。
親父に連れられて銭湯へ来た、兄弟である。
大人なら兎も角、銭湯のあの熱い湯船に浸かる際、
子供は随分と大変であろう。
最近、大人でも躊躇しつつ浸かってゆく御仁を、多く見かける。
そこへ来て、この頑固な親父さんは、それを許さない。
子供には、ちと酷だと思ったが、反面、古風な教育方針だと、関心した。
それは、この家族が、日本人でなく、
中東系の外国人だったから、尚更、である。
一般的に、銭湯へ来る外国人はマナーが悪い。
なんて、言われているが、一概にそんな事も無い、と感じている。
私も、群馬県内各地の伝統銭湯へ入浴しているが、
湯客に、少なからず外国人の方を見掛けた。
そこではむしろ、日本人のマナーが疑わしい局面に、
出遭う事の方が多かった。
外国人における、「マナーが悪い」。
と言うのは、異文化である銭湯文化を、知らない者であろう。
日本人における、「マナーが悪い」。
と言うのは、銭湯文化を知りつつも、それにあえて準じない者、だと思う。
どちらが性質悪いかと選べば、後者を挙ざるを得ない。
私が今日見た外国人の様に、日本人よりも日本人らしく銭湯に入り、
そこで、子供の教育までする、筋の通った外国人だっている。
と言う事は、銭湯マナーの周知徹底が出来れば、外国人の潜在顧客を、
大いに呼び込める、のである。
巷の銭湯で、異文化交湯が見られる日が、もうそこまで来ている。
【天候】
終日、穏やかな快晴。
風も弱く、暖かな気候。
銭湯の瓶牛乳、平均110円。