1181声 東向きの窓

2011年03月26日

自室の、東向きの窓の下に、机がある。
机の上は、ノートパソコンが一台と、不要な物で溢れかえっている。
天気が好くて、暇な日は、日がなぼんやりと、この机に頬杖をついて、
硝子窓の空を見ている。

青空は、雲が浮かんでいる時もあるし、雲一つ無く、真っ青な時もある。
一日の中で、常に移ろい行く。
空を眺めていて、雲があった方が、眺めやすい。
雲一つ無い真っ青な空、と言うのは、なんだか焦点が彼方へ吸い込まれて行くようで、
眺めていると、いささか目が疲れる。

口を半開きにして、空を眺めていても仕様が無いので、積んである本をひとつ手に取る。
「アサヒグラフ増刊1985年4月1日号」
グラフ雑誌の衰退甚だしい現代からしてみれば、いささか感慨深い雑誌である。
先日、古本屋で買ったのだが、購入の動機は、「昭和俳句六十年」と言う特集だったから。
そう、1985年は、昭和も数える事60年。

その特集内容は、驚くほど豪華。
まず、橋本照嵩氏が撮影した、「現代俳人群像」。
山口誓子から始まって、楸邨、青邨、青畝から、林信子までが、
その「現代俳人」としての生活を、氏によって活写されている。
次に、座談会。
このメンバーがまた、井伏鱒二、飯田龍太、河盛好蔵、永井龍男と言う、競演である。
そしてとどめに、桑原武夫による「再説・第二芸術論」。
もはや、脅威なる内容の充実ぶりである。
当時、発売されたこの雑誌を熱心に読んでいた若人の中から、
現在活躍している、「現代俳人」が幾人も生まれたのだろう。
そして、裏表紙には、日産自動車の広告。
これまた、渋いセドリックが載っている。

頁を閉じて窓に目をやる。
空の底に沈殿している、紫色の夕日。
遠くの空に、影絵のような雲がひとつ浮かんでいる。

【天候】
終日、風強くも快晴の一日。