自室の、東向きの窓の下に、机がある。
机の上は、ノートパソコンが一台と、不要な物で溢れかえっている。
天気が好くて、暇な日は、日がなぼんやりと、この机に頬杖をついて、
硝子窓の空を見ている。
青空は、雲が浮かんでいる時もあるし、雲一つ無く、真っ青な時もある。
一日の中で、常に移ろい行く。
空を眺めていて、雲があった方が、眺めやすい。
雲一つ無い真っ青な空、と言うのは、なんだか焦点が彼方へ吸い込まれて行くようで、
眺めていると、いささか目が疲れる。
口を半開きにして、空を眺めていても仕様が無いので、積んである本をひとつ手に取る。
「アサヒグラフ増刊1985年4月1日号」
グラフ雑誌の衰退甚だしい現代からしてみれば、いささか感慨深い雑誌である。
先日、古本屋で買ったのだが、購入の動機は、「昭和俳句六十年」と言う特集だったから。
そう、1985年は、昭和も数える事60年。
その特集内容は、驚くほど豪華。
まず、橋本照嵩氏が撮影した、「現代俳人群像」。
山口誓子から始まって、楸邨、青邨、青畝から、林信子までが、
その「現代俳人」としての生活を、氏によって活写されている。
次に、座談会。
このメンバーがまた、井伏鱒二、飯田龍太、河盛好蔵、永井龍男と言う、競演である。
そしてとどめに、桑原武夫による「再説・第二芸術論」。
もはや、脅威なる内容の充実ぶりである。
当時、発売されたこの雑誌を熱心に読んでいた若人の中から、
現在活躍している、「現代俳人」が幾人も生まれたのだろう。
そして、裏表紙には、日産自動車の広告。
これまた、渋いセドリックが載っている。
頁を閉じて窓に目をやる。
空の底に沈殿している、紫色の夕日。
遠くの空に、影絵のような雲がひとつ浮かんでいる。
【天候】
終日、風強くも快晴の一日。