1195声 真夜中の砲弾

2011年04月09日

朝から雨。
休日、それも桜の時期の雨。
ってのは、巷には喜ばれないかも知れない。
しかし、今日の私にとっては、喜ばしいことに思える。

花粉症のこともあるが、雨の休日。
ってのは、神経を休めるには、丁度良い。
一刻も早く、曇天を引き裂いて、青空の顔が見たい。
なんて思っている方々は、大変、精神的に健康な状態だと思う。

昨晩は、隣町にある場末の居酒屋に行ってみた。
「行ってみた」
と言うのは、その店が初めての店だったから。
初めて入る酒場(この場合では個人経営の小さな飲み屋であるが)、
と言うのは、ちと緊張する。

生麦酒から始まって、カウンターでひとしきり飲む。
店内、私を除いて、みな顔見知りの常連さんばかり。
その中にいて、ひとり粛々と、杯を進めてゆく。
時折、厨房の親父さんが気を使って話しかけてくれるが、
会話を上手く繋げない。
仕様が無いので、テレビのボクシング中継ばかり見ていた。
会話に混ぜてほしい。
のではなく、この、空気に混ぜてほしい。
のだな、などと、たこわさびをつつきながら、
自らの胸の奥を探っている、かなしさ。

帰る頃にはやや千鳥足になっており、
店の女将さんが、見送ってくれた。
覚束ない足取りで、二階から降りて行く、私の背中を、
呆れた様な顔で見ているような、気がした。
階段の下まで降りて、数歩。
「ゴチリ」
音がした暗がりの方へ目をやると、
砲弾のようなものがひとつ転がっていた。
顔を近づけて確認すると、それは、
プロパンガスのバルブの上にかぶせてある、カバー。
元の位置に立てて、帰った。
砲弾、ではなくて良かった。

【天候】
朝より雨だが、直ぐに止む。
午後には薄日が差し込み、しきりに囀りも聞こえた。