1198声 原風景のスライドショー

2011年04月12日

昨晩の深酒の影響が、色濃く出ている。
私のこの、深刻な花粉症の諸症状に、である。
おそらく、免疫力が著しく低下してしまったのであろう。

この、花粉に侵された頭に、思い浮かべている、
おぼろげな映像がある。
それは、風呂。
平日午後で誰もいない、銭湯の浴室。
貸切状態の浴槽に独り浸かって、寛いでいる。
湯気の中、窓から斜めに射しこんでいる、夕日の束。
その日その場所に、確かに私は居たのである。
これは、自分の中の、原風景の一枚なのであろう。

裏の田圃に現れた、一面の菜の花畑。
榛名山の後から豊かに湧き上がる、雲の峰。
風の強い日、なだらかな稜線が澄んでいる赤城山。
全て、郷愁を誘う私の原風景であり、
時折、スライドショーで脳裏に映し出される映像である。

昨晩、福島県南相馬市で被災されたおばあちゃんと、
会話する機会を得た。
福島県から遠く離れた群馬県で、夜を過ごしつつ、
郷里の話を聞かせてくれた。
その時、おばあちゃんの脳裏にも、
郷里の原風景がスライドショーで、映し出されていたのだろう。
おばあちゃんの柔和だがどこか悲しげな瞳の表情から、
そんな印象を受けた。

一日も早く、スライドショーの映像ではなく、
その風景をその目で見られる日が来ればよい、と思った。
話の折。
「おばあちゃんの家は、そこから何キロくらいなの」
と、質問すると。
「そうさなぁ、大体、二里くらいだ」
と言う、回答。
「二里」を、「およそ8km」と計算できるまで、少し時間が掛かった。
長さの単位を、「里」で答える。
そこに、おばあちゃんの人柄の、はたまた南相馬市の、素朴さを見た。
素朴な事ってのは、美しい。

【天候】
終日、快晴の一日。
午後より風強く、花粉の飛散量も多し。
依然として断続的な、余震。