昨晩の深酒の影響が、色濃く出ている。
私のこの、深刻な花粉症の諸症状に、である。
おそらく、免疫力が著しく低下してしまったのであろう。
この、花粉に侵された頭に、思い浮かべている、
おぼろげな映像がある。
それは、風呂。
平日午後で誰もいない、銭湯の浴室。
貸切状態の浴槽に独り浸かって、寛いでいる。
湯気の中、窓から斜めに射しこんでいる、夕日の束。
その日その場所に、確かに私は居たのである。
これは、自分の中の、原風景の一枚なのであろう。
裏の田圃に現れた、一面の菜の花畑。
榛名山の後から豊かに湧き上がる、雲の峰。
風の強い日、なだらかな稜線が澄んでいる赤城山。
全て、郷愁を誘う私の原風景であり、
時折、スライドショーで脳裏に映し出される映像である。
昨晩、福島県南相馬市で被災されたおばあちゃんと、
会話する機会を得た。
福島県から遠く離れた群馬県で、夜を過ごしつつ、
郷里の話を聞かせてくれた。
その時、おばあちゃんの脳裏にも、
郷里の原風景がスライドショーで、映し出されていたのだろう。
おばあちゃんの柔和だがどこか悲しげな瞳の表情から、
そんな印象を受けた。
一日も早く、スライドショーの映像ではなく、
その風景をその目で見られる日が来ればよい、と思った。
話の折。
「おばあちゃんの家は、そこから何キロくらいなの」
と、質問すると。
「そうさなぁ、大体、二里くらいだ」
と言う、回答。
「二里」を、「およそ8km」と計算できるまで、少し時間が掛かった。
長さの単位を、「里」で答える。
そこに、おばあちゃんの人柄の、はたまた南相馬市の、素朴さを見た。
素朴な事ってのは、美しい。
【天候】
終日、快晴の一日。
午後より風強く、花粉の飛散量も多し。
依然として断続的な、余震。