1230声 夜中のサイレン

2011年05月14日

サイレンの音、である。
だんだん、こちらに近づいてくる。
近くまで来て、止まった。

カーテンを少し開けて、窓から夜の闇を見てみると、
家の前の路。
ゆっくりと前進で入って来る、一台の、白い大きな車。
白い車、ったって、あれは、赤色灯を回した救急車ではないか。

「ついに年貢の納め時か」
などと、訳の分からぬ感情が湧きだして来て、
「万事休す」と、何故だか気持ちの上で腹を括った。
一挙に高鳴る鼓動を聞きつつ、カーテンの隙間から、
救急車の動向を見守っている。
救急車からは、救急隊員と思しき人が一人降りて来て、
庭先に入ってきた。

「もはやこれまで」
と思い、急いで玄関まで行き、扉を開けて、外へ出る。
そして、軽く会釈し、玄関先へと、救急隊員を迎え入れた。

こちらへ歩み寄って来る、救急隊員。
「お縄を頂戴いたしやす」
じゃなかった、
「どうしたんですか」
と聞いてみると、その救急隊員。
「○×△と言う施設は、この辺りですか」
それは、最近、近所に出来た所謂、デイサービスの施設の名であった。
「それなら、そこの角曲がった先、すぐそこですよ」
と、一件落着。

近所の人たちは、おそらく、私が救急車で運ばれた。
と、勘違いしている人もあろう。
しかし、何故、私の家に来たかは、不明である。
ここ最近、何かにつけ、こう言う風に、巡り合わせが良くない。

施設の入所者で、具合の悪い人が出たのであろう。
人の事、と言う程度の心配をしながら、家へ戻った。
その後、床に着くまで、再びサイレンが鳴る事は無かった。
帰る時にサイレンを鳴らさない。
と言うのは、どう言う事だろうか。
そんな事を考えつつ、寝てしまった。

【天候】
終日、五月晴れ。
午後より風若干、豊かなる夕焼け。