1283声 夕菅を思う夕暮

2011年07月06日

「そろそろ見頃かな」
山間を吹き行く涼やかな風に焦がれながら、
炎天の下で思いを馳せるのは、「きすげ」である。

「きすげ」は、花の「黄菅」。
群馬県で名所となっているのは、主に、榛名湖の「夕菅」。
野反湖や尾瀬の、「日光黄菅」などである。
七月初旬から中旬くらいが見頃で、
高嶺に咲き群れる黄菅と空とのコントラストが、それはもう美しい。
排気ガスみまみれながら、炎天のアスファルトを歩いていると、
思い浮かべるその光景が、想像上の天国に均しい。

この黄菅。
どう言う訳か、あまりメジャーな歳時記には掲載されていない。
私が所有している数冊の歳時記にも、電子辞書の歳時記にも載っていない。
そこで、「俳句の花図鑑」(尚美堂出版)の頁を捲ると、流石、
「夕菅」も「日光黄菅」も載っている。

高原風景の中を、ゆっくりと吟行してみたい。
花図鑑の例句にある、阿波野青畝の一句。

天が下万のきすげは我をつつむ

夕暮の淡い光の中で、たゆたう一面の夕菅。
空が近くにある、清々しい高原風景である。
そんな景色から、遠く離れた街場では、
明日に控えた七夕に、俄かに沸いている。

【天候】
梅雨晴れ。
終日、甚だ蒸し暑し。