向かいの家の、瓦屋根の照り返りが、目にしみる。
蒸し暑い部屋から、ぼんやりと眺める、窓の景。
いま、強烈なる二日酔いに、苛まれながら。
昨夜は、所用で桐生の銭湯へ出掛けた。
暖簾をくぐって、銭湯の中にある食事処で話していると、
当然、「まぁ一杯」と言う運び。
近所に住む、知り合いの方もいらして、「まぁ、一杯」。
その内、「かぁちゃん、焼酎もう一本」。
酔眼朦朧としてきたところで、桐生駅まで送って頂いた。
「最後の一軒になってもやる」
親父さんの力強い言葉に、とても感銘を受けた。
しかし、その言葉を言わしめている様な現状も、ある。
暖簾を下ろす銭湯が後をたたなくて、現在の残存数は二十七軒。
風呂に入って、手拭いのしぼり方を知らない日本人が増えるのは、
さみしい気がする。
しかし、そこには、それぞれの現実がある。
そんな事を考えながら、列車は新前橋駅に着いた。
改札を出たが、真っ直ぐ帰宅する心持ではなく、
千鳥足で階段を踏み外しながら、駅前へ出た。
目抜き通りを歩いていると、なにやら往来に人だかり。
近づいてみると、そこは居酒屋、である。
とても盛況なので、お客さんが入りきれないのである。
「お待たせしてすみません」
ぼんやりと立っている私の横へ、いつの間にか店のお姉がいて、
「生ビール中グラス無料券」を頂いた。
太っ腹なサービスに、頭を下げ、人気の秘訣も垣間見えた気がした。
閑散とした新前橋駅前ロータリーに於いて、稀有な賑わいである。
「さて」
踵をかえして、直ぐ隣の、チェーン店の居酒屋へ入った。
カウンターに座り、冷たい麦酒で一息つく。
先程の光景を、句に認めようと、句帳にペンを走らせた。
しかし、文字にならない文字。
その時、「相当きてるな」、と実感した。
【天候】
梅雨の晴れ。
湿度が高く、まとわりつく様な、暑さ。