1310声 藁蒸せば牛肉

2011年08月02日

国産牛肉が、おぼついていない。
先日、放射性セシウムを含む稲わらを食べていた牛の肉から、
基準値を上回る、放射性セシウムが検出された。
これを受けて、いま東日本を中心とする各県では、 
放射性物質の全頭検査が進められている。

私などは疎いので、牛肉の産地など気にせずに、日々の食生活を送っている。
しかし、子供のいる家庭や食の安全性に過敏な方は、相当、衝撃を受けている様子。
幼子のいる友人の家庭でも、飲料水から野菜に始まり、今度は食肉と、
日々の食事に神経をすり減らしている。
いささか気の毒に思うが、子供の方が影響を受けやすい。
と言う一般常識に基づき、実直に、親としての勤めを果たしているのである。

百鬼園先生に「「養生訓」と言う随筆がある。
その中の一説に、こんな話がある。
体調が芳しくない百鬼園先生が、かかりつけである小林博士に、
日常の養生法を申し渡される。
その中、食べてはいけないものに、好物である牛肉が入っていた。
これが面白くなかった、百鬼園先生。
「牛は冬の間は藁しか食ってゐない。牛の本質は藁である。
藁を体内に入れて蒸すと牛肉になる。」
「藁が肝臓に悪いと言ふのは可笑しい」などと、独自の理論を展開。
家庭内で、牛肉のすき焼きの事を「藁鍋」と言う事に決めてしまって、
しきりに、牛肉、いや藁を食べてしまうと言うのである。

この偏屈っぷりが、百鬼園節なのだが、先日のこのセシウム牛の報道を目にして、
案外、この百鬼園理論は的を得ているかも知れないと、思い直した。
「藁を体内に入れて蒸すと牛肉になる。」
と言う表現のまま、藁に付着していた放射性セシウムが、肉になってしまったのだから。
食の安全性について、混迷を極めている、現在。
もし百鬼園先生だったら、この状況下で、どんな偏屈な理論を打ち立てて、
牛肉を食べようとしているであろうか。

【天候】
終日、曇り。
朝晩涼しく、過ごしやすい。