1313声 八木節祭当日

2011年08月05日

ビルの上のビアガーデン。
その屋上から、夕暮の桐生の街を一望していた。
夜よりも深い色に染まって行く、山並み。
桐生競艇場の、煌々とした灯り。
駅から出てゆく、短い電車。
そして、真下に広がる街中。
目抜き通りである、本町通りでは交差点ごとに櫓を囲んで、
熱狂の八木節音頭。

高崎の仲間と合流し、屋上の夜風に吹かれつつ、麦酒で乾杯。
浴衣で立ち働く店員のお姉さんも、つまみも麦酒も、
そして、街に鳴り響いている八木節も、変わっていない。
昨年から、一年経っている事を踏まえて、そう感じた。
桐生の街に住む、お年寄りも子供も、共有している八木節は、
変わらないのであろう。

ひとしきり、飲んだところで、ビル屋上から降りて、本町五丁目の櫓へ。
踊りが、思い出せるかいささか不安だったが、15分も踊りの輪を見ていれば、
頭で考えるよりも、体が思い出した。
二時間くらいは、休み休みであるが、踊った。
仲間はみな、滝の汗。
麦酒を飲んで踊っては、また滝の汗。

いつもの事ながら、終電へ飛び乗り、帰路へと着いた。
スナックのママ、銭湯の親父さん、その他、知り合いの方々への挨拶も、
満足に出来ぬまま、電車は進む。

本町通りの人ごみの中で、偶然遭った、銭湯の親父さん。
一人で、黙々と、ゴミ拾いをしていらした。
ビニール袋に散らかされた缶ゴミを入れつつ、
縁石に腰掛けていた、金髪の青年三人に向かって言う。
「綺麗になるとさ、きもちいいだろ」
「そーっすよね」
大分酔っているらしい青年たちは、うすら笑いを浮かべつつ、
腰を上げて雑踏の流れへ向かった。
腰をかがめて黙々と、道路を歩いて行く親父さんの後姿を見ていて、
冷水を浴びせられた様に、胸に響いた。
親父さんの居る桐生の街は、素晴らしいと思った。

自分の血の中に、八木節の音頭が染み込んで行く、感覚。
その土地の湯へ浸かって、その土地の酒を飲んで、
その土地の音頭に身を委ねる。
理屈ではない、この面白味。

【天候】
終日、曇りがちなる晴れ。
各地域で、一部夕立。