1324声 たゆたう月

2011年08月16日

そこはかとなく、秋色。
そう思うのは、紫色に近い茜色の、夕焼け雲の色加減。
草むらには、秋の虫も鳴き出して、沈む夕日に夏の終わりを見てしまう。

今宵は、銭湯でなく近所の日帰り温泉へ出掛けた。
露天風呂へ浸かっていると、斜向かいには、老人と青年。
耳をそばだてているつもりは無いのだが、話し声が聞こえて来る。
断片的に聞こえて来るその内容は、どうやら、戦時中の話しらしい。
おじいちゃんが、自分が子供時分に体験した戦争を、
おそらく盆に帰省した孫である青年に、語っているのであろう。

8月15日を1日過ぎた巷では、その事実さえ消去してしまったかのように、
戦争の内容を見なくなる。
神妙な顔をして聞いている青年は、坊主頭と言い、礼儀正しい態度と言い、
野球部員と推察される。
おじいちゃんは、切りの良い所で、野球の話題に移行した。
真っ黒に日焼けした、精悍な青年の顔に、66年前のあの炎天の日の自分を、
思い出したのかも知れない。
青年もまた、話しの中に、66年前の若かりし日のおじいちゃんを見ていたに違いない。
水面浮かんでいる月は、たゆたう水に、伸び縮みしていた。

【天候】
終日、炎天。
「サッ」と夕立有り。