1358声 ブルーブラックのミミズ

2011年09月19日

文字を書くのが苦手、である。
子供時分から、字が滅法下手で、今日でも日々ミミズ文字を量産している。

世代的な事もあろうが、左程、不自由や恥ずかしさを感じる場面が無かった。
大人になる直前、上手い具合に、携帯電話やインターネットが普及しはじめたからである。
必要書類はパソコンで作成し、手紙や葉書は電子メールで済ませてきた。
苦労したのは履歴書を書く時くらいなもので、社会に出てからは、
私の読みづらい字で迷惑している人は沢山いるだろうが、当の本人は知らん顔している。

そんな折、文字の事を意識する機会が、訪れた。
それは、数年前に始めた俳句に起因する。
俳句仲間と句会をする際、短冊に文字を認める。
サラサラと万年筆を走らせる方もいれば、私の様に、
そこら辺で拾ってきたようなボールペンで、書いている者もいる。
句会ではその後、この短冊を参加者みなが、用紙に清書してゆくのである。
誰の作品か分からなくするため、均等に分けられた短冊の句を、自分で書き写す。
自分の文字を意識するのは、その瞬間。

短冊にブルーブラックの美しいインクで流麗に書かれていた句が、
私が用紙に書き写すと、たちまちに色褪せて精彩を欠いた句に見える。
安っぽいボールペンの筆跡が綴る、ミミズ文字。
いつも、なんだか、俳句作者に対して申し訳ない様な心持になる。
他人が書いた自分の句を見て、やはり綺麗な文字で書いてある方が、
その句が映えて見える。
なので、私の手元に来た句は、不幸だと思う。

最近は使用しているペンのせいにして、書きやすいボールペンなど探している。
探したり調べたりしている内に、徐々に、ペンの奥深い世界に触れ始めた。
元来凝り性なので、その世界に足を踏み入れたらまずいと思い、
一先ず、安価なボールペンを買う予定を立てて、生まれ始めた物欲を誤魔化している。
しかし、私の文字がブルーブラックのインクで書かれたとしても、やはり、
ブルーブラックのミミズが、のたくっているだけだろう。

【天候】
朝より晴れ。
その後、午後にかけて下り坂で、夕方から雨。
台風が急遽進路を変え、明日、本州に上陸の予定。