文字を書くのが苦手、である。
子供時分から、字が滅法下手で、今日でも日々ミミズ文字を量産している。
世代的な事もあろうが、左程、不自由や恥ずかしさを感じる場面が無かった。
大人になる直前、上手い具合に、携帯電話やインターネットが普及しはじめたからである。
必要書類はパソコンで作成し、手紙や葉書は電子メールで済ませてきた。
苦労したのは履歴書を書く時くらいなもので、社会に出てからは、
私の読みづらい字で迷惑している人は沢山いるだろうが、当の本人は知らん顔している。
そんな折、文字の事を意識する機会が、訪れた。
それは、数年前に始めた俳句に起因する。
俳句仲間と句会をする際、短冊に文字を認める。
サラサラと万年筆を走らせる方もいれば、私の様に、
そこら辺で拾ってきたようなボールペンで、書いている者もいる。
句会ではその後、この短冊を参加者みなが、用紙に清書してゆくのである。
誰の作品か分からなくするため、均等に分けられた短冊の句を、自分で書き写す。
自分の文字を意識するのは、その瞬間。
短冊にブルーブラックの美しいインクで流麗に書かれていた句が、
私が用紙に書き写すと、たちまちに色褪せて精彩を欠いた句に見える。
安っぽいボールペンの筆跡が綴る、ミミズ文字。
いつも、なんだか、俳句作者に対して申し訳ない様な心持になる。
他人が書いた自分の句を見て、やはり綺麗な文字で書いてある方が、
その句が映えて見える。
なので、私の手元に来た句は、不幸だと思う。
最近は使用しているペンのせいにして、書きやすいボールペンなど探している。
探したり調べたりしている内に、徐々に、ペンの奥深い世界に触れ始めた。
元来凝り性なので、その世界に足を踏み入れたらまずいと思い、
一先ず、安価なボールペンを買う予定を立てて、生まれ始めた物欲を誤魔化している。
しかし、私の文字がブルーブラックのインクで書かれたとしても、やはり、
ブルーブラックのミミズが、のたくっているだけだろう。
【天候】
朝より晴れ。
その後、午後にかけて下り坂で、夕方から雨。
台風が急遽進路を変え、明日、本州に上陸の予定。